“世界最速の妖精”が追求するプロレスとは?「緩急をつけて感情を揺さぶる戦いを」【なつぽい#2】




2015年にプロレスデビューをはたし、デビュー日と同日の今年5月31日に10周年記念興行を大成功させたのが、スターダムのなつぽいだ。ユニット『COSMIC ANGELS』に所属し、“世界最速の妖精”とも呼ばれる彼女の体つくりの秘密に迫るインタビュー、全3回の第2回は、学生時代のバトントワリングの経験とプロレスの違いについてのお話を。

プロレスデビューをはたした後の思いを語ったなつぽい(写真/橋場了吾)

【写真】なつぽいの試合ショット&決めフォト

できること・できないことを分けてできることを膨らませていった

なつぽいは2015年5月31日にアクトレスガールズのリングで、プロレスラーとしてデビューした。

「(戸惑いは)めちゃくちゃありましたね。それまで体のすべての動きのベースがバトンでしたし、バトン自体頭で考えるよりも感覚で習得していったタイプだったので、プロレスに関しても『この動きは私はできる』みたいにバトンに置き換えちゃうんですよ。『この側中の動きはこんな感じかな』みたいに置き換えてみると、結果できなかったこともありました。バトンの癖がつきすぎていて、前宙や側宙は得意なんですけど、後ろの動きがなかったのでムーンサルトはできないとか。『運動神経がいいからできるでしょう?』と言われるんですけど、じつは自分が培ってきた感覚の中にないものはできないんです。未だに後ろに飛ぶのは怖いので、ムーンサルトはできないんです。なので、できることとできないことははっきり分かれたんですけど、できることをもっと膨らませていった感じですね」

体つくりに関しても、バトンとプロレスでは違いがあった。

「体つくりでいうと、首ですね、バトンのトレーニングには首トレがないですし、受け身を取ることもないので首を引くことはないので。(バトンをやっているときは)首も結構細くて長かったんですけど、今は太くなっちゃって顔と首がつながっています(笑)。僧帽筋はもともとバトンでも使っていたんですけど、プロレスを始めてから大きくなったところかなと思います」

お客さんに感動してもらいたい、感情移入してもらいたいという気持ちが強い

豪快なクロスボディを決める(©スターダム)

なつぽいの二つ名は『世界最速の妖精』。その動きのトップスピードはすさまじいのは周知の事実だが、最近はそのスピードに力強さが増してきた印象だ。

「年齢的にも、ずっと走っているのは難しくなってきたというのもありますね。スターダムでハイスピードのベルトを狙っていたときは、ずっと動き続けるのを目指してやっていたんですけど、いつの頃からか緩急をすごく意識するようになりました。速く動けるときには、その数十秒に全集中して一気に動く。休むときにはじっくりと間をとりながら、お客さんの空気を感じたり、感情の戦いに持ち込んだりして、試合という物語の中に緩急をつけることを意識しています」

この考え方は、舞台を経験してきたからこそなのかもしれない。

「舞台に立っていたときからそうだったんですが、お客さんに感動してもらいたい、感情移入してもらいたいという気持ちがありました。とくに白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座=2024年7月に戴冠)を狙い始めてからそういう感情を意識するようになって、緩急を出せるようになってきたのかもしれないですね」(#3に続く)

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