“カテゴリーや階級が増えすぎ”…という言葉をよく聞く。当然、増加によるわかりにくさを生んだり、その競技における勝者の価値が薄れてしまったりすることは確かにあるだろう。だが、それによって新たな光を手に入れる者が生まれ、ポジティブな変化が生まれるのであれば、それは決して悪いことではない。
9月21日に開催されたJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の第5回日本クラシックフィジーク選手権の175cm超級で初優勝を飾った直野賀優(なおの・よしまさ)は、開催5年目の比較的新しいこの競技において、まさに脚光を浴びた一人だ。
2022年にメンズフィジーク180cm超級で優勝し階級日本一の座を獲得した直野。だが翌年からは競技の評価基準の見直しが図られたことで、大まかにいえば「デカすぎる」ボディはメンズフィジークでは評価されにくくなった。結局、2023年は3位という結果に。“メンズフィジークの壁にぶち当たった典型的な選手”という目で彼を見る者も多かっただろうが、本人としては、「…という感じではないと思っています」とやんわり否定する。内心を聞いてみた。
「メンズフィジークというカテゴリーで成績がついてこなかっただけで、自分の身体づくりはしっかり前に、どんどん進んでいました。その過程でカテゴリーを変更したら、自分が輝ける場所に身を置くことができた。成長を評価してもらえるという状況になっただけだと思っています。
なので、“壁にぶち当たった”というよりは、『ちゃんと自分が輝ける場所を見つけることができた』。この言葉は、今日168cm以下級で優勝した岡典明選手の言葉でもあるんですけどね。自分が輝ける場所を見つけることができたのは、自分にとって本当に大きな財産であり収穫になりました」
岡ももともとメンズフィジークを主戦に直野とともに戦ってきた盟友。岡は2023年に転向し、昨年は欠場したが、今回も優勝で自身としては連覇。直野は、昨年の転向初年度の4位からの優勝。新たな道を切り開いた先駆者たちと言えるだろう。
やっと見つけた自分が輝ける場所で今後も戦い続けるのかと問うと、それもまた「まだわからないですね」とこぼす。
「正直、僕のボディビルはカテゴリーに対する執着がありません。今シーズンは仕上がりがめっちゃくちゃ良く、仕上がり体重がそもそも去年から3kgくらい増えています。筋量の増加を結果として残してしまったので、まだ伸びる、まだ自分を大きくできる。そう考えると、来年もまた絶対大きくしていくし、大きくした身体がどのカテゴリーで評価してもらえるのかをしっかりと考えていきたいなとは思っています」
近年は20代の若手の台頭が著しいこのボディビル・フィットネス界だが、現在33歳の直野もまだまだ伸び盛り。さらなる進化を楽しみにする彼のファンも多いはずだ。
「今も自分が成長していると、その姿でも、数字の上でも、自他ともに認められるような成績として成果を残すことができたので、これは事実として自分もちゃんと評価して、また次につなげていきたいです。成績がなかなかついてこない中でも僕に注目してくださり、関心を持ってくださった方と、今日は一緒に喜ぶことができるんじゃないかなっていう気持ちです。また大きなものを成果として残すので、一緒にオーマイしましょう!」