「私が東京女子を東京ドームへ連れていく、そのためにもカッコいい体になりたい」【荒井優希#3】




2021年5月に本格的なプロレスデビューをはたし、今や東京女子プロレスには欠かせない存在となった“ジーニアス・ガール”こと荒井優希。SKE48の中心メンバーとして長らく活躍、今年3月いっぱいでアイドル活動を卒業しプロレスラーとしての道を選択した。そんな荒井に体つくりの秘密を聞くインタビュー全3回の最終回は、プロレスラーになってからの意識の変化のお話を。

東京女子プロレスの思いを語った荒井優希(写真/橋場了吾)

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派手に投げられたり踏まれたりしているが、ケガをしないのは珍しいのかも

荒井優希はよく骨太と言われるという。確かに、大きなケガをしたという話を聞いたことはない。

「自分ではあまり思ったことはないんですけどね…体は強いのかなと思います。周囲を見たら、これだけケガをしないのは珍しいのかなと。結構、派手に投げられたり踏まれたりしているんですけどね(笑)。危機を感じたことはありますよ、アジャ(コング)さんと対戦した時は全部がヤバかったですね。一斗缶も、バックドロップも、裏拳も…でもサブミッションで乗られたときにまったく動けなくなっちゃって。アジャさんはさらっとかけた技なのかもしれないですけど、動けなくなってヤバいと思いました」

その荒井、じつはデビュー戦で肋骨にヒビが入っていた。

「ずっと隠していたんですよ。デビュー以来ケガをしたことはないと言い張ってきたんですけど、伊藤(麻希)さんのこけし(倒れこみ式ヘッドバット)で肋骨を折ってしまったんです。もともと肋骨は弱いのかなと思うことはあって、SKE48時代のトレーナーさんにも『一番下の骨が弱いかも』と言われたことはありました。でもアドレナリンが出ていたのか、試合中もその後の特典会も気づかなくて、(名古屋への)帰りの新幹線の中で痛み始めて…でも、これでプロレスができなくなるのは嫌で言えなくて。数日後に練習が入っていたんですが、さすがにできないなと思って、当時練習を一緒にしてくださっていた山下(実優)さんに連絡したら『すぐに大人に言いなさい』と。山下さんが正しい判断をしてくださって。でも、数週間後の次の試合には出ました」

ケガをすると周囲にも迷惑がかかるからケガをしたくない

再び東京ドームのリングに立つのはいつの日か(©東京女子プロレス)

荒井は今、パーソナルトレーニングに励み体づくりをしているが、これは自分のためだけではなかった。

「パーソナルでは全体的にやってもらっています。今までは筋トレから逃げてきた人生だったんですけど、本当にケガをしたくないという気持ちが強くなりましたね。これは、私自身ケガをしたくないというだけでなくて、周りの方々にも迷惑がかかるから。ケガで欠場となると、会社にもお客さんにも迷惑がかかるので、しっかり体をつくっていきたいなと。自分は今まで、偏った場所の筋肉を使ってプロレスをしてきたんです。背中と前ももの筋肉だけを使って。なので、他のところも含めて体を上手に使えるようになるためのパーソナルですね」

そして食事にも気を遣い始めたという。

「以前よりも自宅にいる時間が増えたので、ご飯を炊くようになりました。あと、鶏肉は小分けにして茹でて食べています。いいレシピを編み出したんですよ(笑)。買ってきた鶏肉の皮をはがして、調理用のはさみで小さく切って、塩と砂糖と、片栗粉小さじ2…ここはめっちゃこだわっています(笑)、を入れて袋の中で揉んで、一個ずつ茹でるんです。野菜はセイロ蒸しが好きで、前から食べるようにしていますね」

このように意識が変わってきた荒井は、7.21大田区大会で瑞希の持つ最高峰のベルトであるプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦。敗れはしたものの、ビッグマッチのメインを務めた。

「近づいたように見えて、すごい距離を感じましたし、今の自分にはまだ無理だなとも思った瞬間でもありました。試合自体は、自分できること、できるはずないこと、今の実力以上のものが出せたと思っていたんですけど、結構厳しい声をいただいて。珍しく落ち込んだんですけど、前に進まないといけないので全部“燃料”にしちゃいました。自分は何をするために東京女子プロレスに入ったのかを考えると、ここで歩みを止めることは無責任だと思いますし、SKE48の卒業公演で自分が(東京女子で)東京ドームに行きたいと言ったことで、心を動かされた選手・関係者の方がいると聞いているので逃げ出せないですよ。逃げ出すことは簡単ですし、ひょっとしたらそのほうが幸せを感じることがあるかもしれないですけど、一時の感情に流されるのは違うなと思って。卒業公演で多くの皆さんの前で言った自分の言葉に責任を持って、引っ張っていける存在になりたいですし、チャンピオンにもなってよりたくさんの方々に東京女子を知ってもらいたいです。そのためにも、もっとカッコいい体を目指してトレーニングしたいと思います」

脱アイドル、正真正銘のプロレスラーへ。荒井優希が、その“カッコいい体”を東京ドームで披露するのはいつの日か――。

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