2012年にDDTプロレスリングでデビューし、多くの王座を獲得してきた遠藤哲哉。その均整の取れた肉体は、写真集も発売されフィジークの大会に参加するほど。彼の体づくりに対するストイックさは、業界内でも有名だ。2025年1月からはプロレスリング・ノアを主戦場にしている遠藤に体づくりの秘訣を聞くインタビュー、全3回の第2回は体づくりに目覚めてからのトレーニングと食事のお話を。

ヒジのケガをきっかけに体重を増やし、体づくりに目覚める
遠藤哲哉は2012年にプロレスデビューしているが、DDTの入門テストでは一発芸が課せられるという都市伝説がある。
「やりましたよ(笑)。僕はリングの上で、新体操のときにやっていたアクロバットな動きを見せました。笑い(を取る要素)はまったくなかったので、今受けたら落とされるような気がします(笑)。当時はダンベルを買って、自分で調べてトレーニングをしていたんですが、一発芸の前の基礎体力が全然クリアできなかったんですよ。当時は合格するハードルが低かったんでしょうね…。(入門直後の)プロレスの練習はきつかったですよ。マット運動はすんなりできて、受け身もすぐに取れるようになったんですけど、ロープワークがしんどかったですね。とにかく痛くて痛くて…。体づくりに関しては、最初は寮の近くの体育館で独学でトレーニングをやっていたんですけど、デビューしてしばらくしてケガをして欠場しているときに増量しようと思ってからですね。デビュー当時は80kgなかったんですけど、90kgくらいまで増やしました。ヒジを脱臼してしまったので、下半身のトレーニングを中心にして白米をたくさん食べました。そのときにヒンズースクワットも1000回やってみようと思って、最初は100回でしんどかったんですけど、慣れてくるとできるようになりました。本当に汗で水たまりができましたよ(笑)」
今でこそ筋骨隆々な遠藤の体だが、ジムでのトレーニングを始めたのは10年ほど前だった。
「デビューした後もジムには通わずに寮にあるトレーニング器具を使っていたんです。デビューから4年くらい経った時ですかね、給料が上がったのでジム代をねん出できるようになって通い始めました(笑)。当時、竹下(幸之介、現KONOSUKE TAKESHITA)がゴールドジムに通っていて『本当の筋肉はゴールドジムでしかつかない』と言っていて、僕もゴールドジムに通い始めました。今もですけど、ゴールドジムはほぼ毎日行っていますね。道場の合同練習がある日は基礎体力の練習をするんですが、それ以外はジムでトレーニングしています」
遠藤の体は、シムでトレーニングすることですぐに変化した。
「寮にあった器具はローイング系が中心だったんですが、ジムだとラットプルマシンがあるので背中が一番変化しましたね。今は…下半身のトレーニングのほうが好きですけど(笑)。やっぱりだらしない体を見せたくないというのが一番で、海外のレスラーはカッコいいじゃないですか?ロック様(ドウェイン・ジョンソン)やジョン・シナとか。身近なところでは諸橋(晴也=ボディビルの大会にも出場経験があるプロレスラー)さんもバキバキですよね。自分の中では彼らを目標にしてトレーニングをしていました。ただ、なかなか“大きく”はならなかったですね。欠場期間は体重を増やしていたんですけど、ずっと体が重いと試合で疲れてしまうんです。技ができなくなることはないんですけど、寝ている状態から立ち上がったり、トップロープに上ったりというちょっとした動きで疲労が蓄積していって。逆に絞ったままでも筋肉がつかないので、86~7kgを上限にして一番動きやすい体重を探っていました」
いろいろなメニューを試して、一番自分に合うメニューにたどり着いた

体重の増減でいうと、遠藤はプロレスの試合を欠場することなくBEST BODY JAPAN(2019年)やマッスルゲート(2021年)に出場するという離れ業をやってのけた。
「ベストボディジャパンに出たときはバキバキに絞ったんですけど、そこまで極限状態までではなかったのでまだなんとか動けていましたね。フィジーク(マッスルゲート)に出たときは75kgまで落として水抜きもしたので、自分の頭の中で思っている動きができなくなりました。リングに上がろうと思っても、足が上がらないんですよ。自分では上げているつもりなんですけど…思い通りに体が動かなかったのはしんどかったですね。食事制限はそんなにきつくなかったんですけど」
食事といえば、DDTの先輩にあたるHARASHIMAが「遠藤は、北海道巡業でもジンギスカンもラーメンも食べずに、自分で作った弁当を冷凍して持ってきて食べている」と語っていたが…。
「そこまで食に対する欲がないので、毎日同じメニューでも食べられますし、むしろメニューを考えるのが面倒くさいんです(笑)。同じメニューを毎日作っていたほうが楽ですね。(HARASHIMAの話は)本当です(笑)。 メニューは自分で調べて、良さそうなものを実際にある程度の期間摂ってみて、体の調子や筋肉のつき具合・張りとかを見て食材の取捨選択をして今のメニューになりました。朝は和食中心で、ご飯と鮭、卵と納豆とメカブですね。昼と夜は大体同じで、ご飯と、牛のもも肉と皮を取った鶏の胸肉とブロッコリーを味付けして食べています。間食は…プロテインですね!体重を増やしたいときは、ご飯の量で調節しています」(#2へ続く)