新技の空中姿勢の秘密はひねるタイミング 今の肉体をキープしいつかはプロレス大賞を【遠藤哲哉#3】




2012年にDDTプロレスリングでデビューし、多くの王座を獲得してきた遠藤哲哉。その均整の取れた肉体は、写真集も発売されフィジークの大会に参加するほど。彼の体づくりに対するストイックさは、業界内でも有名だ。2025年1月からはプロレスリング・ノアを主戦場にしている遠藤に体づくりの秘訣を聞くインタビュー、全3回の最終回は現在参戦しているノア、そして今後の目標のお話を。

フィジークを経てプロレスラー仕様の肉体を作り上げた遠藤哲哉(写真/橋場了吾)

【フォト】鍛え上げた遠藤のマッスルボディ

新技の空中感覚は学生時代の新体操の経験が活きている

現在、遠藤は所属しているDDTではなくプロレスリング・ノアを主戦場にしている。今年元日のノアの武道館大会に参戦し、メインイベントで凱旋帰国を果たしたOZAWAが清宮海斗からGHCヘビー級王座を一発奪取したことに、刺激を受けての決断だった。

「体はDDTにいた頃よりちょっと大きくなりましたね。ノアは地方は多いかもしれないですけど、DDTより全体の試合数は少ないのでコンディション調整はやりやすいですね。ただ、僕は基本的にコミュ障なので参戦当時は気軽に話せる選手もいなくて、ちょっと辛かったです(苦笑)。今は周囲の選手からも、自分からも話せるようになったので居心地が良くなってきました。小田嶋(大樹)さんが、一緒にトレーニングしたいですって言ってくれているのはうれしいですね」

遠藤はこれまでバーニングスター・プレス(シューティングスター・プレスと同型)をフィニッシャーにしてきたが、ノア参戦中に披露したのが、バーニングスター・プレスの要領で跳び空中で横回転のひねりを加えてプレスする難易度Eの新技だ。まだ名前はないのだが、この技のバランス感覚は学生時代の新体操の経験が活きていると言う。

「動き自体は新体操にはないんですが、空中感覚という意味では活かされていますね。ひねるタイミングを間違うと、軸がぶれてしまって相手の頭や足の方に落ちてしまうので、飛んでから空中でひねるのが大事だということに気づいて、体をしっかり締めてひねりを加えています。体が緩んでいるとひねりきれないんですよね」

自分より年上の選手が体を維持しているのを見るとモチベーションにつながる

最近はこのバーニングスター・プレスにひねりを加えた新技を披露している(©プロレスリング・ノア)

その遠藤、10.11のノア両国大会ではHAYATAと組み、杉浦貴&シュン・スカイウォーカー(DRAGONGATE)組と対戦する。杉浦といえば自衛隊出身で、55歳にしてとんでもない肉体を維持している。

「(20近く)年上の人であの体は、やっぱりモチベーションにつながりますよね。今、僕は34歳なんですが、疲れが抜けなくなるのを感じ始めているんですが、TEAM 2000Xとはいえタカシ(杉浦)の肉体を見ていると、その年齢(55歳)まではがんばろうかなと。練習内容に関していうと、僕はむしろ20代の頃よりもしんどいことをやっているかもしれないですね。20代のときよりも圧倒的に重い重量を上げられるようになっていますし。スクワットでいうと昔は100~110kgでやっていたんですが、今は180~190kgですかね」

そして11.3のDDT両国大会では、HAYATA&宮脇純太というノア所属選手と組み、秋山準&青木真也&高鹿佑也と対戦する。300日以上ぶりにDDTのリングに上がることになるわけだが、高鹿とは昨年まで一緒のユニットに所属し合同トレーニングを行なっていた仲だった。

「今年に入ってから、一回も(一緒に練習)やっていないですね。もう正直、高鹿はいいかな(笑)。この1年近く僕はノアで過ごして高鹿はDDTで過ごして、どちらが濃い1年間を過ごしたのか、高鹿にはっきりとわからせたいですね。僕が注目しているのは宮脇選手で、高橋ヒロム選手(新日本プロレス)に一番噛みついていますし、正直空回りしている部分もあるかと思うんですけど、それはそれでいいと思うんですよ。正統派でずっとやってきた中で そういう人間くさいところを出していった方がレスラーとして味が出ると思いますし、僕のDDT凱旋に気を遣わずめちゃくちゃにしてほしいですね」

最後に、遠藤に今後の目標を聞いてみた。

「今回N-1(VICTORY=ノアの真夏の最強戦士決定リーグ戦)で優勝できなかったのが悔しいので、またN-1に出て優勝したいのがまずひとつ。もうひとつはプロレス大賞のMVPを獲りたいという目標もあります。一度技能賞(2020年)を獲っていて、DDTの選手も続けてノミネートされたんですが、MVPはまだ誰も獲れていないので。それまでずっと今の体を維持していきたいですね」

遠藤は因縁のあるノアマットで『Elegant Avenger(華麗なる復讐者)』として、己の肉体ひとつで立ち向かっている。その遠藤がさらなる強固な肉体を手に入れたとき、それが華麗なる復讐がはたされるときなのかもしれない。

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