10月12日に東京・江戸川区総合文化センターにて開催されたJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の日本一決定戦「第43回日本女子フィジーク選手権大会」が開催され、荻島順子(おぎしま・じゅんこ/58歳)が優勝し大会3連覇を果たした。
表彰式で優勝が決定すると、涙をこぼした荻島。ただ、非常に失礼な言い方にはなるが、下馬評通りの優勝であり大きな驚きはなく、目指すところはその先の世界の戦いにあるはずである。それほどの涙が湧き出てきた理由はいったい…。
「実は今シーズン、もともとの持病のヘルニアからくる怪我で、3~4カ月ほどトレーニングができない時期が続いただけでなく、日常生活にも支障をきたすほどの激痛と戦う日々でした。それこそ、口を開けてご飯を食べるだけで痛い…。もしかしたら今年は大会に出られないかもしれない、というほどでした」
今シーズン初戦は9月初旬の日本クラス別選手権だったが、それほどの苦難は、ステージ上ではいっさい現れていないように見えた。
「そんな状態でも、まずは何ができるのだろうと考えて。リハビリから始まり、ゼロから身体づくりを見直していきました。この痛みが治まるならもうなんでもいい!…というぐらいだったのですが、支えてくれた、助けてくれた方々のお陰で今日、なんとかステージに立つことができました。出場できただけでも嬉しかったのですが、恩返しをしたいという気持ちで、『そのためには絶対に優勝しなくてはいけない』と思っていて、今までの優勝とは違う格別な重みのある嬉しさです」
ボディの仕上がりの素晴らしさはこれまでと変わらず、ポージングの美しさにも磨きをかけてステージに立ったのはさすが女王。特にフリーポーズでは、荻島ならではの「美と強さ」が凝縮された1分間のパフォーマンスであった。
「優雅さの中にある強さを表現しました。大草原の中にいるライオンのような、大きく包み込むイメージです。最後に回転するところは私の中では超難関だったのですが、無事にちゃんと立ち上がることができました(笑)」
大きな壁を乗り越え、次なるステージは11月にスペインで開催されるIFBB世界選手権。再び世界の舞台で、荻島らしい女子フィジークを披露してくれるはずだ。
「女子フィジークに限らないとは思いますが、自分ととにかく向き合っていける、そんな競技かなって思っています。自分で考えて、自分の身体を作り上げていくのがすごく楽しい。そして、そんな自分を支えてくれて、応援してくれる人がいる、本当に素晴らしい競技だと思います。昨年は東京で開催でしたが、今回はスペインなのでどれだけ評価していただけるか…またチャレンジしたいと思います」