プロテインもサプリも飲まず、栄養はすべて食事から プロレスと格闘技を極めた女・朱里の体調管理




プロレスラーとして、格闘家として、両ジャンルで頂点を極めた女子選手は、いつしか『モノが違う女』と呼ばれるようになった。細身の体ながら、投げてよし、蹴ってよし、極めてよし。スターダムの朱里は、現在の女子プロレス界における“強さの象徴”といえるだろう。新日本プロレスの10.13両国国技館大会で、IWGP女子王座に2回目の戴冠を果たした朱里の体つくりの秘訣に迫るインタビュー全3回の最終回は、UFC時代の思い出とこれからのお話。

UFC時代に経験した毎日6時間の練習がわずか30秒で無になった日

今年はプロレスに舞台に大活躍の朱里(写真/橋場了吾)

【写真】朱里の試合カット&決めフォト

朱里はプロレスと格闘技を両立するにあたり、UFCに参戦した時期(独占契約のため)を除き、試合のインターバルをほぼ取らずに試合に臨んでいた。

「減量した後に、プロレスで時間切れ引き分けの試合をしてから、格闘技に臨んだこともありましたね。さすがにあのときは、自分の頭のネジ1本外れているなと思いましたけど(笑)。プロレスと格闘技を両立すると決めた以上、腹をくくってどちらも本気でやっていましたから。練習をしっかりやって、しっかり睡眠をとって、ですね」

UFC参戦時代、朱里は過酷な環境下で敗北を喫したことがある。

「チリで試合をしたときに、30時間かけて現地入りしたんですけど、試合を迎えるまでの間にコンディションを整えるのが大変でした。結果として、33秒でレフェリーストップ負けを喫してしまい、この一戦のために1日6時間休まず練習してきた結果が33秒で何もなくなってしまいました。この悔しさとやるせない気持ちは、今でも貴重な経験として心に残っています」

UFC時代のギャラは、半分がジムやマネジメントに配分されるため、プロレスで貯めたお金を切り崩していた時期もあるという。

「お金がない時期を経験しているからこそ、お金の有難さを感じますよね。過去の団体では、チケットのノルマもあったこともありますし、ポートレートのデザインをやっていたこともあります。そういう経験もあるので、今スタッフさんにやっていただいていることに有難いなと思うのと同時に、色々な立場の方の気持ちもわかるので、人間としての深みにつながってきているのかなと思います」

プロテインもサプリも飲まず、栄養はすべて食事から

IWGP女子王座の奪還に成功した朱里(©新日本プロレス)

そんな朱里に、食事について気を遣っていることはあるか聴いた。

「食事は…実はそんなに気を遣っていないかもしれないですね。格闘技で減量が必要なときは気を遣っていましたけど、プロテインもサプリも飲まないんです。栄養はすべて食事から、ですね。でも、脂っぽいものはちょっときついかな…すぐ胃もたれしてしまうので。カフェでミルク系を頼むときも、低脂肪に変えてもらうことが多いです」

朱里が体調管理上、一番気を遣っているのは「気持ち」の部分だった。

「気が緩むと、すぐ体調悪くなるんですよ(笑)。風邪をひいたり、熱を出したり。試合の後に、5日間くらい何もスケジュールが入っていないときは危険地帯なので気をつけています」

その朱里、10月末からは主演舞台『人を殺して何が悪い?』も控えている。プロレスと舞台の両立は、これまた体調管理が難しそうだが…。

「セリフ量がこんなに多いのが初めてでテンパりましたが(笑)、自分のやりたい事なので精一杯頑張ります!体に関しては、しなやかさというか“動ける”体を目指して今の状態をキープしていきたいですね。今までめちゃくちゃ練習してきたので、関節にもかなりダメージはあったりして(実際先日肘の骨の除去手術を受けたばかり)。なので、昔とは比べ物にならないくらいケアをするようにしています。ストレッチは欠かせないですし、治療にも行くようになりました。色々な経験をしてきているからこそ『ヤバいな』というのが、自然にわかるんですよ」

『モノが違う女』が歩んできた経歴は、まさに今の“強さの象徴・朱里”を生み出すためのものだった。過酷な経験ですら、今は笑い話にできる負けず嫌いな気持ち。それが、朱里が『モノが違う女』と呼ばれる最大の理由なのだろう。

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