10月18日~19日の2日間にわたり、世界最大規模のフルコンタクト空手団体・新極真会が主催する「第57回全日本空手道選手権大会」が東京体育館で開催された。今大会は体重無差別で頂点を決する国内最高峰の闘いだ。ここでは組手部門の男女チャンピオンにスポットを当てる。
カザフスタンの超新星が、半世紀以上の歴史に風穴を空ける
今大会での組手部門では歴史的な出来事が起こった。82名がエントリーした男子トーナメントにおいて、決勝に進出したアンジェイ・キンザースキー選手(カザフスタン支部)が衝撃の一本勝ち。海外選手初の全日本王者となったのだ。
全日本大会は1969年の第1回大会以降、日本人選手が王座を守ってきた。半世紀以上におよぶ歴史を変えたキンザースキー選手は、193cmの長身から繰り出す蹴り技を軸に、他を圧倒する強さを見せた。
優勝インタビューでは彼の強さの源が垣間見えた。今大会の1週間前にはカザフスタンで開催された大会に出場し、突貫スケジュールで日本へ遠征。今回の全日本大会に出場していたというのだ。さらに、翌週にはジョージアで開催される大会に出場するという。
「これはカザフスタンでは普通のことです。一度カザフスタンに帰って、来週の大会に備えます。ケガはないのでとくに問題はありません」(キンザースキー選手)
負担も相当であろうハードスケジュールを、さも当然かのように言ってのけたキンザースキー選手。体格や技術はもちろん、タフネスと精神力も怪物級だ。
手足のリーチを警戒し、接近戦に持ち込まんとする日本人選手の戦術については「日本人選手はカザフスタンの選手に比べて接近戦が多いことは知っていたので、それに対しての対策はしてきました」と分析を施して大会に臨んでいたようだ。強さの底が見えない怪物の攻略法は、今後の闘いにおいて大きなテーマになるだろう。
絶対女王・鈴木未紘が盤石の強さで3連覇達成
女子のトーナメントでは、主要4大会を完全制覇するグランドスラムを達成、2022年12月の第54回全日本大会から約3年間に渡って無敗を続けている絶対女王・鈴木未紘選手が優勝を飾った。
これで彼女は全日本大会3連覇達成かつ、連勝記録をさらに更新。「ボクシングの井上尚弥選手のように、負ける姿が想像できないところまでいきたい」と大会前に語っていたように、圧倒的な強さを今大会でも証明した。
新極真会の女子は鈴木選手を筆頭に藤原桃萌選手、目代結菜選手、網川来夢選手と、今大会のベスト4でもある強豪選手が上位を独占。「4強」と称されるトップグループが形成されている。
昨年の全日本大会では、4強同士がぶつかれば最終延長戦までもつれる激闘が展開され、実力の拮抗を物語っていた。しかし、今大会では鈴木選手が網川選手、藤原選手に本戦2分間で勝利を収め、頭ひとつ抜けた強さを見せつけた。
優勝者インタビューでは「本当にたくさんの方々に支えていただいた中、優勝できたのでよかったです。去年の大会では自分自身に情けないという思いが残って、自分にリベンジするために1年間稽古してきたので優勝できてホッとしました」と思いを語った。
昨年の大会では、試合内容や当日に至るまでの取り組みに納得がいかず、己への悔しさが残ったという鈴木選手。今年は妥協なき日々を過ごし、充実の内容で全日本を闘い抜いた。“自分自身へのリベンジ”をはたした女王は、無敗記録をどこまで伸ばすのだろうか。鈴木選手が挑む次なるステージにも注目だ。




