「もっとがっしりした体つきにして腹筋を見せていきたい」元自衛官の新人レスラー、プロレス界に飛び込んだ覚悟とその後




中学生・高校生は「完全な帰宅部」だった。その少女が、高校を卒業するタイミングで進路を決めるときに、なりたかった職業はプロレスラー。しかし親の反対もあり、自衛官の道へ。1年半、しっかりと心身を鍛え上げた後にスターダムのオーディションに応募し見事合格。そして今、期待の新人と呼び声が高いのが儛島(まいしま)エマだ。今年5月にデビューした儛島の体つくりの秘訣に迫るインタビュー全3回の最終回は自衛官を辞めてプロレスラーになってからのお話。

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もっとがっしりした体つきにして腹筋を見せていきたい

念願かなってプロレスラーになった儛島エマ(写真/橋場了吾)

無事オーディションをクリアし、スターダムの練習生となった儛島エマ。自衛隊の訓練とプロレスの練習とでは、辛さの“質”が違ったという。

「とにかく夏の練習がきつかったですね。道場のエアコンを、練習の熱気が超えてしまうので…。それくらいハードな練習をしていて、すごく削られましたね。同期が6人(儛島のほかに、浜辺纏、金屋あんね、鉄アキラ、姫ゆりあ、古沢稀杏の計6名)で練習していると、脱落していくんですよ。リングから降りて休憩して復活、という感じでした。あとプロテストの種目はきつかったですね…腕立て伏せ25回をいろいろな種類5種目、腹筋50回を2セット、スクワットを200回、エプロンで背筋30回を2セット、首を使ったブリッジを2分、それから『1分半』です。これは、30秒受け身、30秒ロープワーク、30秒受け身、です。そこから関節の取り合い2分を2セット、スパーリングを4分。そして最後に、プロテストでも自己アピールをしました。このメニューに近いことを道場でやると、先輩に見られている緊張感からかきつかったですね」

儛島が今、体つくりで気をつけていることを聴くと…。

「私は筋肉がつきやすいので、全体的にもっとがっしりした体にしていきたいですね。あと、腹筋を見せていきたいです。今は自炊することが多いんです。実は筋肉も付きやすいんですが、最近体質が変わったのか、食べたものがしっかり体重に反映されるようになってきたので、バランスよく、肉多めに(笑)、自分の食べたいものを食べたい範囲で食べています。」

シンプルにひとつひとつの技・動作のスピードを上げていきたい

儛島といえばこのポーズだがその意味は?(©スターダム)

儛島は今年5月23日、後楽園ホールでファン時代に好きになったAZMを相手にデビューを果たした。その時から使用しているのが、自分の頭に左手の人差し指と中指を突き立てるポーズだ。

「自衛官時代に厳しく言われたのが、訓練中には絶対に銃口を人様に向けるなという銃口管理の徹底を求められたことだったんです。人を殺められる道具を、絶対に向けるなと常々言われていました。だから、人に向けるポーズではなく、自分に向けたんです。ちょっとぶっ飛んでいて、プロレスラーとして頭のネジが外れていた方が優位じゃないかなという思いもあります」

7月4日、儛島はこれまたファン時代から好きだった吏南からアクシデントとはいえプロ初勝利をマーク。吏南からは、吏南が背負ってきた若手中心のブランド興行『NEW BLOOD』でトップを獲れと発破をかけられた。

「もちろんフューチャー(・オブ・スターダム=デビュー3年未満もしくは20歳以下の選手が挑戦できるベルト)は狙っていますし、ハイスピード王座も…なので、シンプルにひとつひとつの技・動作を早くしていきたいと思っています。お客さんにも『早く挑戦した方がいい』と認められるくらいになりたいです。自衛官を続けていても幸せになれたとは思うんですが、自分で選んで行動したというのは初めてだったので、今のように試合をさせていただいて、自分のことを知っていただいているだけで、やってよかったな、ありがたいなと思っています」

自身を「緊張しい」と評する儛島エマだが、他団体の選手と対戦した際には持ち前の気の強さで試合をコントロールした。自衛官として過酷な訓練を乗り越えた強靭な身体と、初志貫徹でプロレスラーになった精神を持つ儛島だけに、リングでその才能が開花する日はそう遠くないと見た。

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