病と闘い、相手とも闘う 心停止も経験した女子レスラーの死生観「病気というだけで『何もできないでしょ?』と言われるのが嫌」




デスマッチ志向の、とある覆面女子レスラーがSNSでこうポストした。『綺麗な体がもったいない』とよく言われるという。続けて『幼少期にした透析やらなにやらで昔からツギハギだょ』(原文ママ)と。そう、JUST TAP OUT所属のrhythm(リズム)はこの24年という人生の中で、様々な身体のトラブルをクリアしてきた。そして、その先に行きついた死生観は、少し特別なものに……。そのrhythmに聞く自身の体との付き合い方、第2回はプロレスラーになってからの体づくりのお話を。

デスマッチへの思いを語ったrhythm(写真/橋場了吾)

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強い選手よりもやられている選手が立ち上がる姿がカッコいいなと思った

rhythmのデビュー当時の体重は40キロ台(現在はビルドアップされ63kgある)。身長が164cmなので、かなりの細身だった。

「ピルを飲むと体重が増えてしまいますし、血栓もできやすくなんです。で、ピルを止めたら40キロ台までまた落ちてしまうの繰り返しでした。それでもプロレスをやりたかったのは、自分を勇気づけてくれたのがプロレスだったからですね。実はデビューしてからも腎臓の方で1回入院しているんですけど、プロレスはやってみても楽しくて、弱ければ弱いほど強いという一面もあると思って。正直、強い選手よりもやられている選手が立ち上がる姿がカッコいいなと思っちゃって…自分も身体的に弱すぎるから、病気と戦っている子どもたちにも『ここまで動いて楽しめるんだよ』というのを見せたいんですよね」

小学校時代の原体験が、rhythmの気持ちを強くした。

「病気というだけで『何もできないでしょ?』と言われるのが嫌で。小学生のときに、マラソン大会に出られなかったのが嫌だったんです。自分は動くのは大好き、でもこの腎臓のおかげで息が上がっちゃうのはダメだったんですよ、運動制限・食事制限もかかっていましたし。今も半年に1回、経過観察のために病院に行っています」

有刺鉄線ボードに衝突し悶絶(©JTO)

小さい頃に心停止を経験し『何とかなるだろう』の精神に

食事制限の話が出たが、プロレスラーになるために苦労したのは体づくりだった。

「練習生のときは、タンパク質を摂りすぎてはいけない期間だったので、太れないですし筋肉もつけられない…それでもやっぱり筋肉をつけないといい試合にはならなくて、一度練習生に降格することになりました。そのときに強制的に動く機会が減って、何とか乗り越えられたという感じでしたね。ただプロテインのように即効性があるものが飲めないんですよね。なので、すべてを食事で補う形です。(病院の)先生に全部相談して、食事管理の講習も受けましたし、先生と栄養管理士さんと3人で面談をして、腎機能が弱い人向けの食事を考えました。タンパク質の摂りすぎはまずいので他のもので補って、とか。動物性のタンパク質は即効性があるので、植物性のタンパク質の方が腎臓にはいいよ、みたいな感じで。あと、食事はゆっくり噛んで少しずつ食べるんです。一気にドカンと摂ってしまうと、消化しきれなくなるので。食事は、1回の量を減らして回数を増やす。それで筋肉をつけていった感じですね」

そのrhythmは、TAKAみちのくが実践している「相手を光らせるプロレス」のほかに、流血上等のデスマッチにも魅せられていた。

「ファンのときに代表のプロレスを見て、代表の団体を見に行って、色々な団体のプロレスラーが出ていて…そうしたら他のインディー団体も見てみたいじゃないですか(笑)。その中で大日本プロレスさんやFREEDOMSさんを見に行って、デスマッチにハマっちゃいましたね。『人間ってこんなに血が流れても生きているんだ、こういう見せ方もあるんだ』と。自ら血を流す戦いに行く姿がカッコ良かったんですよね、自分にはない考え方だったんで。自分は小さい頃に心停止も経験していますし、死んでいたかもしれない次の段階にいるので『何かあっても何とかなるだろう』の精神なんですよ。ほかの子だと怖いと思うことも、別になんとかなるよ、と」

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