デスマッチ志向の、とある覆面女子レスラーがSNSでこうポストした。『綺麗な体がもったいない』とよく言われるという。続けて『幼少期にした透析やらなにやらで昔からツギハギだょ』(原文ママ)と。そう、JUST TAP OUT所属のrhythm(リズム)はこの24年という人生の中で、さまざまな体のトラブルをクリアしてきた。そして、その先に行きついた死生観は、少し特別なものに……。そのrhythmに聞く自身の体との付き合い方、第3回はあこがれのデスマッチを体験したお話、そして今後の展望を。

【写真】病気と付き合いつつ闘う女子レスラー・rhythmのフォト集
自分がやりたいことは、プロレスを知らない人にプロレスを知ってもらうこと
2025年2月22日。rhythmは藤田あかねを相手に初のデスマッチに臨む。いきなり有刺鉄線ボードデスマッチという、刺激が強すぎる試合形式だった。
「自分が最初に見たデスマッチで、口の中に串を刺していたんです。すごいなあと思って。自分も経験してみたいなと思って、代表にはデビュー前からデスマッチをやりたいと相談していました。もちろん代表も親もお医者さんも大反対ですよ。でもプロレスの経験を積んで、体重も増やして、ほかの選手がハードコアやっているんだから自分もやりたいと交渉して。ハードコアとデスマッチは違いますけど『rhythmがやりたいのではデスマッチだもん』って。で、有刺鉄線ですよ。怖かったですし、痛かったですし、太ももがえぐれてケロイドになりました。でもあこがれていたものだから、うれしいんです。またデスマッチをやりたいという気持ちしかないです」
そして10月15日。同期である稲葉ともかの自主興行では、盟友のAoiと組んで、ハードコアの先駆者である世羅りさ・宮崎由妃組と対戦。文字通りの玉砕で、ボロボロにされた。rhythmは、二人の強烈すぎる攻撃を受けに受けまくった。
「自分はデスマッチやハードコアは好きなんですけど、“女子プロレスの世界”はあんまり……。ほかの団体さんにも一度は出るんですけど、その役割は自分じゃなくてもいいのかなと思うんです。自分がやりたいことは、プロレスを知らない人にプロレスを知ってもらうことなので、イベントだったらどこでも行きますよ。でもこの間のともかの興行では、自分から世羅さんとやりたいと言ったんです。世羅さんは来年1月に引退されるのがすごく嫌で……もっと早くにやりたかったですね。
試合をしていて楽しかったですし、終わった後もずっと楽しくなっちゃって… ひとつひとつの攻撃は痛かったですよ、でもそれ以上にもっとやりたいと思ってしまいました。体の傷の話は、自分はもともと病気で手術痕があって、ほぼ生まれたときから傷がついているんですよ。なので、この傷がなければ今生きていないですし、生きるために必要だった傷なので。人工透析の跡以外にも、うなじにしこりを取ったときの傷もありますしね」

人生なんて短い、いつ終わるかなんてわからないので、やれるときにやる
そしてrhythmは今年いっぱいでJTOからの独立を発表。来年からは“プレジデンテ”としてフリーの道を歩むことになった。
「1年くらい前から代表には相談していたんですが、代表からは旗揚げメンバーということもあって反対されて……。去年、自分が地元の江戸川区で自主興行(2024年8月2日)をやったんですけど、それがもう楽しくて。やったことないことをやるのが好きなので……人生なんて短いじゃないですか、いつ終わるかなんてわからないので、やれるときにやろうと。
プロレスをやるのも楽しいですけど、JTOの選手と他団体の選手が当たることちょっとお外の世界を見てもらえますし、プロレスを知らない人にも知ってもらって、プロレスを見たことがある人にはこんな選手もいるんだよというのも知ってもらって。プロレス全体の底上げになればいいかなと思って始めたんですが、楽しくなっちゃって、だったら自分でやっちゃおうと思っての独立です。
プレジデンテの意味は……自分はゲームが好きなんですけど、『トロピコ』という自分が大統領になって国を作り上げるゲームがあって、その中の大統領の呼び名です。自分はプレジデンテと呼ばれるのが好きなので(笑)、プレジデンテとしてのプロジェクトをやっていこうと。JTOとはケンカ別れではないので、JTOの外でできることがあるならお手伝いしたいという気持ちはありますよ」
その一方で、一選手としてのrhythmがどういう方向性を目指していくのかは試行錯誤中だ。
「同期の(稲葉)ともかと比較すると、自分がプロレスラーであることに重きを置いていなくて、上に行きたいという欲求がほとんどなく…自分のやりたいプロレスを追求したいですね」
インタビューの2日後。rhythmはこんな一節をXにポストした。
「Let’s make this life a crazy rollercoaster ride」(この人生を狂ったジェットコースターみたいな旅にしよう)
幼少期に生死を彷徨い、学生時代も病気がちだった。それらを克服して今がある。辛い経験を笑い飛ばし、独自の死生観に辿り着いたrhythmは、“非日常という日常”を生きている。
