「痛くて、苦しくて、過酷でした」フワちゃんが“再デビュー戦”で証明した覚悟と努力【スターダム】




プロレスラーとしてはド新人になるフワちゃん。普通に考えたら、簡素なコスチュームで入場してくるところなのだが、そのド派手ないでたちに場内がザワついた。

芸人のZAZYから借りてきたという大きな羽根を背負っての入場。ドッと沸くというより、いささか困惑する観客。だが、これも「覚悟」の表れだった、という。

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【写真】レスラーの資質を見せたフワちゃんの試合フォト

「派手なことが好きだから、プロレスでもくるくる回る技とか使いたくなっちゃうんですけど、葉月さんから「それは違うよ」と教えていただいて。大事なのはそこじゃないし、口だけでペラペラしゃべるんじゃなく、体、心、頭を全部使ってやるのがプロレスなんだって学びました」

そこにこだわれば、試合はめちゃくちゃ地味になるかもしれない。だから、せめて入場はド派手に、ということのようだ。

ただ、観客の困惑の目は徐々に変わっていく。リングに上がったフワちゃんはアピールをしたあと、四方にしっかりと頭を下げた。それだけでなく、リングアナからコールを受けたあとも、ふたたび四方に頭を下げる。失礼千万なイメージが強いフワちゃんだけに、この行動は心に刺さるものがあった。

これも諸刃の剣で「そんなに真面目にやったらフワちゃんらしさがなくなる」という意見も飛びかねない。ふざければ叩かれ、真面目にやったら批判されるという八方ふさがり状態を、彼女は何度も頭を下げることで、ひとつの風穴をあけた。

ダイナミックなプランチャーや、武藤敬司の映像を何万回も見て研究したというシャイニングウィザードなど新人離れした技の切れで場内を沸かせたフワちゃん。ミスなく綺麗に決めるには技量はもちろん、デビュー戦と考えると舞台度胸も必要になってくる。四方を満員札止めの大観衆に囲まれるというハードな環境も、日本中からフルボッコにされた彼女なら平気なのかもしれない。

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普通のプロレスラー、いや、トップアスリートからの転向組でさえ、デビュー戦では苦戦する。5分経過のアナウンスと同時に力尽きて、ガクンと動きが悪くなる選手もいれば、声は出ているのに足が出ていかなくなってしまった選手もいた。四方から観られる、というのは、それだけでスタミナを激しく消耗する。

しかし、この日のフワちゃんからはそういった気配は感じられなかった。葉月のハードな攻めを受けていることを考えたら、それだけ受け身がしっかりとれていて、スタミナにも問題がなかった、と思われる。プロレスラーとしての条件をデビュー戦までに整えてきた、ということだろう。

ただ、それだけでは「覚悟」はわからない。おそらく対戦相手の葉月もそう感じたのか、ハードな攻めを見せる。フワちゃんが「なめんなよ!」と殴りかかると、葉月は逃げもせず、逆に手をうしろに回し、ノーガードで「殴って見ろよ」というポーズを見せるシーン。自分がやられてしまうリスクを負っても、フワちゃんの感情を引き出そうとした葉月。これこそが葉月の「覚悟」だった。

気持ちを前面に出して奮闘したフワちゃん。そのとき、客席に変化が起こった。自然発生したフワちゃんコールとは別に、エキサイトした観客から「フワ、行け!」「フワ、もっと攻めろ!」という声援が飛び始めたのだ。もちろん「フワちゃん」がリングネームなのだから、そのまま呼ぶのが当たり前なのだが「フワ」呼びには、お客さん扱いせずにいちプロレスラーとして応援するぞ、という愛のようなものを感じてしまった。それはすなわち、フワちゃんの覚悟が客席まで届いていた、ということである。

「痛くて、苦しくて、過酷でした」

葉月の豪快なダイビングセントーンに散ったフワちゃんはバックステージに戻ってくると、そう振り返り「全身が痛すぎる。1月中旬ぐらいまで痛そう」と言って笑った。覚悟は伝わったけれど、これからは覚悟だけでは通用しない。2026年から本格的にプロレスラーとして始動するフワちゃんの今後がちょっと気になってきた。