平成のスターから令和の新星へ 女子プロレスで始まった「親子二代のドラマ」




よく『プロレスは大河ドラマだ』と例えられることがある。他のスポーツよりも選手生命が比較的、長いのでひとりの選手を追いかけているだけで何年も何十年も楽しめるし、そこにいろんな選手との試合や遺恨など、さまざまな関係性が絡んでくるので、本当にリアルタイムで大河ドラマを味わっているような感覚になる。

左から府川唯未と田中きずな親子、心希と大向美智子親子(写真提供/マリーゴールド)

【写真】世代を越えて二世レスラーが激突 エモさ全開の試合風景

ただ、それは男のプロレスラーの話。女子プロレスラーの場合、最近では熟練のテクニックを活かすベテラン選手も増えてきたが、ちょっと前までは青春時代をイッキに完全燃焼させて、数年のプロレス人生でリングを去っていくケースがほとんどだった。大河ドラマというよりは甲子園を応援しているような感じ。その短い時間の中でデビュー戦から引退試合までを追いかけることができるのだから、それはそれで濃密でドラマティックではあるのだが。

そんな女子プロレスの世界に、令和になって壮大な大河ドラマが編まれようとしている。平成の時代に活躍した女子プロレスラーの娘たちが、続々とプロデビューしているのだ。

かつて「かわいすぎる女子プロレスラー』として大人気を集めた府川唯未。彼女は元IWGPジュニアヘビー級チャンピオンの田中稔と結婚したのだが、そんなプロレスラー夫婦の愛娘が現在、女子プロレスラー・田中きずなとしてマリーゴールドのリングで活躍している。

そして、もうひとり。長身と美貌で府川唯未と同じ時代に活躍した大向美智子の娘・心希(しんの)も、2025年5月にマリーゴールドのリングで華々しくデビュー。そう、かつての人気レスラーでタッグチームまで組んでいた2人の娘たちが、時空を超えて、令和の時代にリングで闘っている……母親たちのファンだった人たちからしたら、30年越しの大河ドラマをずーっと見続けていることになる。これぞプロレスでなくては味わえない醍醐味、である。

セコンドとして娘をサポートする府川唯未(写真提供/マリーゴールド)

そのふたりが10月26日に両国技館で開催されたビッグマッチの第1試合でついに初のシングル対決! しかもセコンドにはそれぞれのお母さんが付く、というエモさMAXのシチュエーション。30年前に母親たちを最前線で取材してきて、さらに娘さんたちもデビュー戦から追いかけている(親子二代にわたってデビュー戦の記事を書いたのは、府川唯未&田中きずな母娘がはじめてである!)記者としては絶対に見逃すわけにはいかないし、同じ思いを抱えたファンがたくさん会場につめかけていたはずだ。

試合前から両家のキャラクターが爆発する。娘より先にリングに向かい、娘のためにロープを開ける府川唯未。一方、大向美智子は先に娘を行かせて、あとから悠然と登場。いや、さすがにそれは……と思っていたら、ゆっくりと入場しながら客席をこれでもか、と煽りまくっている。娘には試合に集中してもらい、その代わりにめちゃくちゃ盛りあげていく、という大向美智子流の「親心」だったのだ。

2組の母娘が揃った両国国技館のリング。しかし、ここから大河ドラマはちょっと想定外の方向へと進んでいく(1月2日15時公開の#2に続く)。