管理栄養士の山田賢児さんが、食にまつわる疑問を解決する本連載。今回はダイエットにおける、カロリーと満腹感の関係について。

「低カロリー食品だから、満腹になるまで食べても太らない?」
そんな考えを耳にすることがあります。結論から言うと、その考えは正確ではありません。
低カロリー食品を意識すること自体は、決して無意味ではないです。実際、低カロリー食品を選ぶことで「カロリーと満腹感」の兼ね合いから、総エネルギーを抑えやすくなる場面はあります。
体重の増減は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスで決まります。摂取量が消費量を上回れば体重は増えますし、逆であれば減ります。
ここで理解しておきたいのは、カロリーと満腹感は別のものだということです。カロリーは食品が持つエネルギー量で、タンパク質1g=約4kcal、炭水化物1g=約4kcal、脂質1g=約9kcalという性質があります。脂質はエネルギー密度が高いので、同じ量でもカロリーを上げやすいことが特徴です。
一方、満腹感は感覚的な反応です。脳が「もう十分だ」と判断する感覚とカロリー量は必ずしも一致しません。たとえば同じ500kcalでも、野菜たっぷりのスープでは満腹感を得やすいのに対し、スナック菓子ではすぐ食べ終えてしまい、満腹感が得られにくいことがあります。これは食品のかさや成分の違いが、脳に伝わる信号の出し方を変えるからです。
もちろん含有する成分によるので一概には言えませんが、同じかさの低カロリー食品と高カロリー食品を比べた場合、低カロリーのほうが同様の満腹感で摂取カロリーを抑えられるメリットがあります。ただ、低カロリー食品だからと食べ過ぎてしまっては、結果的に摂取カロリーが増えてしまうので本末転倒です。
ちなみにこの「満腹」という感覚は、いくつかの要素が組み合わさって生まれます。まず、胃袋が物理的に膨らむ「機械的な信号」。水分や食物繊維が豊富でかさのある食品は、この信号を刺激しやすくなります。
次に、血糖値や脂肪酸などの「代謝的な信号」。これらが脳に伝わることで、満腹中枢が活性化します。さらに、胃から分泌されるホルモンのグレリン、腸から分泌されるCCK、GLP-1、脂肪細胞から分泌されるレプチンなども満腹感に関わっています。
これらの信号が脳で統合されて「満腹」と感じられるまでには、食べ始めてから約15〜20分かかるとされています。早食いのように短時間で食べてしまうと、脳の満腹サインが追いつかないため、つい食べすぎてしまうリスクがあります。
こうした背景から、低カロリー食品は「満腹感をうまくコントロールする」目的でダイエットに取り入れることが効果的です。かさのある食品やスープ、食物繊維が豊富な食材などの低カロリー食品を取り入れ、ゆっくりよく噛んで食べることは満腹感を得つつ、摂取カロリーを抑えることに一役買ってくれます。こうした工夫によって、過食を防ぎつつエネルギー収支を整えることが可能になるでしょう。
【参考文献】
厚生労働省 e-ヘルスネット「満腹感と食欲の制御」
日本人の食事摂取基準(2025年版)
日本内分泌学会「食欲制御ホルモンの作用機序」
Rolls BJ et al. “Volume of food affects satiety in lean and obese women.” Am J Clin Nutr. 1998.
Blundell JE et al. “Appetite control: methodologies and integrative models.” Physiol Behav. 2010.
