それぞれ特性が違うので、一概にどれかを選ぶことは難しいですが、目的が明確であればおのずと選択肢は見えてくると思います。
クランチは、基本的に腹筋の力で背骨を曲げる動作です。へそをのぞくようにしっかり曲げることで、どちらかと言うと腹直筋の上部を強く使うことになります。

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シットアップは直訳すると「起き上がる」という意味で、いわゆる上体起こしです。主動作は背骨を曲げるというよりも股関節の屈曲ですが、重心の位置をへそ付近に持ってきたほうが動作を行ないやすいので、結果的に背骨を丸めて起き上がることになり、動作の初期段階ではクランチの要素が含まれる場合が多くなります(ただし、背骨を伸ばしたまま起き上がることも可能で、その場合はクランチの要素は含まれません)。それでも主働筋は股関節の屈筋ということになるので、大腿直筋と大腰筋がメインです。
シットアップは大腰筋で腰椎を引き上げる際に局所的なストレスがかかるので、従来から言われてきたように腰を痛めやすいという欠点は否めません。その点、クランチは腰にかかるストレスが少ないので、トレーニング現場ではシットアップよりも推奨されていると思います。
また、おなかを丸めるための腹直筋は、シットアップの場合は協働筋と言えますが、起き上がる際には必然的に腹直筋にも力が入っているので、腹直筋への刺激もそれなりにあるはずです。ただ、腹直筋が十分に疲労する前に大腿直筋や大腰筋が疲労して上がらなくなってしまう場合があるので、腹直筋を中心に鍛えたい人はクランチでしっかり追い込んだほうがいいでしょう。
レックレイズも主動作は股関節の屈曲なので、やはり主働筋は大腿直筋と大腰筋です。ただ、協働筋として腹直筋の下のほうを使うので、クランチで鍛え足りない部分に刺激を与えることができます。
いずれの種目も、バリエーションとしてツイスト(ひねり)を入れる方法があります。それによって腹斜筋を使えるようになりますが、動きの小さいクランチにツイストを入れると、腹直筋への刺激が少し減ってしまうかもしれません。腹直筋に集中するクランチと、腹斜筋に狙いを絞るツイストは別々にしたほうが効果は高まる可能性があります。
※当記事は、書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社/2025年12月発売)からピックアップした内容をWeb用に再構成したものです。
解説:石井直方
1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。東京大学名誉教授(運動生理学、トレーニング科学)。力学的環境に関する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究。日本髄一の“ 筋肉博士” としてテレビ番組や雑誌でも活躍した。『筋肉の科学』『トレーニングのヒント』(小社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)、『スロトレ』(高橋書店)など著書・共著は多数。ボディビルダーとしてもミスター日本優勝(81・83年)、IFBB ミスターアジア優勝(82年)、NABBA 世界選手権3位(81年)などの成績を収めた。2024年8月20日、69歳で逝去。正四位瑞宝中綬章を受章
