魚を食べる時「焼く・煮る・蒸す・刺身」どれがいい?【管理栄養士が本気で回答】




管理栄養士の山田賢児さんが、食にまつわる疑問を解決する本連載。今回は、魚の最適な調理法について。

(C)KINAPOKON_AdobeStock

【動画】筋肉と健康のための「筋育栄養学」特別講義

クライアントから、「魚を食べる時は、焼く・煮る・蒸す・刺身、どれが一番体にいいですか?」と質問を受けたことがあります。結論から言うと、最適な調理法は1つではありません。安全性を重視するのか、減量を目的にするのか、栄養をしっかり摂りたいのかによって、選び方は変わります。

食中毒対策など、安全性を最優先するのであれば、焼く・煮る・蒸すといった加熱調理が向いています。

その中で減量を主目的とする場合は、余分な脂が落ちやすい焼き魚が有力でしょう。皮や表面が香ばしくなり、食べやすい点もメリットです。ただし、高温で焼きすぎると、発がん性があるとされるベンゾ[a]ピレンが発生するため、焦がしすぎには注意が必要です。

加熱調理の中でも、EPAやDHAといった良質な脂質をできるだけ残したいのであれば、蒸す、あるいは煮る調理が適しています。

煮る調理法は、EPAやDHAなどの良質な脂を比較的残しやすく、柔らかい食感で消化が良好です。一方で、煮汁に塩分が多くなりがちなので、摂りすぎには気をつけたいところです。

蒸す方法は、余計な油を使わず調理でき、魚の脂を残しやすい点で、ヘルシーな調理法の1つだと思います。食材の旨味を活かしながら、栄養と体調管理のバランスが取りやすいのが利点です。

文部科学省の日本食品標準成分表を見ると、EPAやDHAといった魚油は加熱しても一定量が残ることがわかります。そのため、「焼くと栄養がすべて失なわれる」というのは誤解です。あくまで煮る・蒸すは多めに脂を残す方法と考えていただければと思います。

刺身は、魚の旨味をダイレクトに味わえ、ビタミンB群など熱に弱い栄養素を保持できるメリットがあります。ただし、他の調理法に比べると食中毒のリスクがあるため、鮮度や管理が重要になります。体調を最優先したい時期は慎重に選ぶ必要があるでしょう。

日本の公的データを見ても、生魚にはアニサキスや細菌による食中毒のリスクがあることが示されています。厚生労働省も、アニサキスについては「加熱または冷凍による無害化」を推奨しています。

このように、調理法にはそれぞれ特徴があります。大切なのは、自分の目的に合った調理法を選ぶことだと思います。

また、魚の脂を「悪」だと決めつけないことも大切です。振り返ると私自身、減量中は脂を落としやすい焼き魚を意識して選んだりしていました。しかし、管理栄養士として多くの人をサポートしてきた今、私が強く感じているのは、「魚の脂は避けるものではなく、目的に応じて味方につけるもの」だということです。

EPAやDHAは、体の炎症を抑え、血流をよくし、脳の働きにも関わります。40〜50代のクライアントにはとくに恩恵が大きく、疲れやすさの改善につながるケースも多く見てきました。また、油脂を摂取することで腹持ちがよくなり、減量中の食欲コントロールに役立つこともあります。脂は悪だとそぎ落としてしまうのは惜しいものです。

私はよく、「口にしたもので自分自身(細胞)がつくられる」とお伝えしています。調理法の選択も、魚の脂も、その日の体調をつくり、未来の細胞をつくります。調理を無理なく続け、健康的な食生活をつくっていくことが何より大切です。

目的に合った調理法をシーンに応じて柔軟に活用し、無理のない形で健康的な食生活を続けていきましょう。

【参考文献】
厚生労働省「アニサキス等の食中毒に関する情報」
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」