少し前の時代の海外の女性ボディビルダーの印象が強いのかもしれませんね。
海外では、女性でもアナボリック・ステロイドを使用しているプロ選手がかなりいました。アナボリック・ステロイドによるドーピングを行なうと、上半身の筋肉、とくに肩や首周りの筋肉が異様に発達してきます。これらの筋肉には男性ホルモンの受容体が多いという特徴があるからです。しかもアナボリック・ステロイドは、その受容体をさらに増やすという報告もあります。それでより男性ホルモンに反応しやすくなってしまうわけです。

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もともと女性らしい体つきだった人も、僧帽筋などが過剰に盛り上がってくると男性のような体つきに見えてきます。そして最終的には声帯まで厚くなり、男性のような声になってしまう場合もあります。
ナチュラルなトレーニングであれば、筋肉が肥大することと男性ホルモンが過剰に増えることに因果関係はありません。そもそも女性は男性と違い、筋トレを行なうことで男性ホルモンが分泌されるということもあまり起こりません。
女性は副腎から分泌される男性ホルモンの量そのものが少なく、男性の0.5%程度と言われています。ですから、筋トレによって体が男性のようになったり、毛深くなったりということはないと考えていいと思います。
かつて某有名女性アスリートがヒゲを剃っていたという逸話がありますが、これもやはりドーピングによる影響が大きいと考えられます。ナチュラルな女性のアスリートは、むしろ上半身の筋肉のトレーナビリティが低いので、どう上半身を強化するかが重要な課題になっています。アスリートでも苦労するほどなのですから、一般女性の場合、男性と間違うような体をつくる筋肉は簡単にはつかないと考えたほうが自然でしょう。
一方、お尻や太ももといった下半身の筋肉は、女性も男性に匹敵するほど筋トレ刺激に反応しますが、これらは男性を特徴づけるような筋肉ではないので、やはり心配無用でしょう。むしろそれらの筋肉が発達することで“くびれ”が目立つようになり、女性らしさが強調される場合もあるでしょう。
ということで、普通の筋トレではゴツゴツした体になるようなことはないので、あまり気にせず、女性も積極的に筋トレに励んでほしいと思います。
※当記事は、書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社/2025年12月発売)からピックアップした内容をWeb用に再構成したものです。
解説:石井直方
1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。東京大学名誉教授(運動生理学、トレーニング科学)。力学的環境に関する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究。日本髄一の“ 筋肉博士” としてテレビ番組や雑誌でも活躍した。『筋肉の科学』『トレーニングのヒント』(小社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)、『スロトレ』(高橋書店)など著書・共著は多数。ボディビルダーとしてもミスター日本優勝(81・83年)、IFBB ミスターアジア優勝(82年)、NABBA 世界選手権3位(81年)などの成績を収めた。2024年8月20日、69歳で逝去。正四位瑞宝中綬章を受章
