すべての細胞はタンパク質を合成しながら生きています。筋肉の場合、タンパク質の合成が上昇することで筋線維1本1本が太くなると、筋肥大という現象が起こります。
タンパク質が合成される道筋には、大きく分けると「転写」と「翻訳」の2つの過程があります。核の中のDNAから必要なタンパク質の情報をRNA(リボ核酸)に写し取り、細胞質へ放出するのが転写。つまり、核はタンパク質を合成する司令塔のような役割を担います。

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情報を得たRNA(メッセンジャーRNA)を元にタンパク質をつくるのが翻訳。その翻訳を行なうのが細胞内小器官である「リボソーム」です。つまり、リボソームはタンパク質の合成工場であると言えます。
分子としては超巨大な部類に入るリボソームは、一般の細胞には数百万ほど存在していると言われますが、筋線維はサイズが大きいので数千万単位だろうと考えられます。主要な構成要素はRNA(rRNA=リボソーマルRNA)が60%以上、残りの40%弱がタンパク質です。
リボソームはmTORシグナル伝達系(タンパク質合成を活性化する化学反応系)の働きにより、スイッチがオンになったり、活性化したりします。そしてmTORシグナル伝達系は、筋トレを行ない、さらにアミノ酸を摂取すると著しく活性化することがわかっています。2000年代以降、そのあたりの研究が非常に進んだため、mTORシグナル伝達系という単語はトレーニーの間でかなり知られるようになってきています。
私たちを含むいくつかの研究グループは、筋トレの刺激によってリボソームが増殖することを確かめました。私たちが行なった実験では、代償性肥大(協働筋を切除することで対象となる筋に著しい筋肥大を引き起こす)によってリボソームの量が非常に増えることが示されました。その後、通常の筋トレでも直後にリボソームが増えることを確かめました。
筋トレを行なうと、リボソームでのタンパク質合成が活性化する反応が起こりながら、同時に比較的即座にリボソームの増殖も起こります。つまり、細胞の中のタンパク質合成工場そのものを増やし、タンパク質の生産能力を高めた上で、本格的にタンパク質を合成する指令を出そうとするわけです。ということで、リボソームは研究の世界では注目されつつあります。
※当記事は、書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社/2025年12月発売)からピックアップした内容をWeb用に再構成したものです。
