筋トレをすると薄毛になるというのはホント?【筋肉博士の最終講義】




「マッチョな人はハゲる」という都市伝説(?)があるようですね。

薄毛の仕組みは完全には解明されていませんが、確かに科学的に見ても、筋肉モリモリのタイプの人は頭髪が薄くなりやすい可能性があります。

書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』よりⓒベースボール・マガジン社/ニューロック木綿子

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ポイントとなるのは男性ホルモン(テストステロン)。これは毛髪に関してはマイナスの作用、逆に体毛に対してはプラスの作用があるというホルモンです。

男性ホルモンが薄毛につながるメカニズムには諸説ありますが、その1つは頭皮の酵素の働きによって、男性ホルモンが毛髪にマイナス作用のあるジヒドロテストステロンという物質に変化してしまうからであるという説です。

そして、もう1つが幹細胞の“弾切れ”説。基本的には体毛であっても頭髪であっても、毛が生える仕組みは同じです。毛穴の中には毛包があり、そこにある毛母細胞が毛髪をつくる仕組みになっています。毛母細胞が死ぬと毛が抜け落ち、毛包幹細胞が分裂し新たな毛母細胞をつくることで新たな毛が生える……というサイクルを繰り返しています。男性ホルモンに毛の生育を激しく助長する作用があると仮定すると、このサイクルのスピードが上がり、幹細胞の弾切れを起こしてしまうことが考えられるわけです。

また、男性ホルモンは皮脂の分泌も促進するので、毛穴に脂が詰まって毛が表面に出にくくなるということも起こります。

男性ホルモンの分泌の強弱に関しては、先天的なものと後天的なものとがあります。先天的に分泌が盛んな人は、大人になってもその傾向は変わりません。見分け方は、手の人さし指と薬指の比較。指の長さは胎児の頃のホルモン環境によるもので、薬指のほうが長ければ男性ホルモンの分泌が強い、という傾向があるようです。

そして後天的に分泌が高まる要因の1つは筋トレです。まず筋トレ直後には一過的に分泌が高まりますし、筋トレを継続している人は成長ホルモンと同様に男性ホルモンの日常的な分泌量が高くなる可能性があります。また、筋トレの時間帯によっても分泌量に差が出てくるかもしれません。

成長ホルモンは寝ている間と日中の数回にわたり、分泌量が増減します。こちらの成長ホルモンには、逆に頭髪を増やす効果がある可能性があります。実際、高齢男性に成長ホルモンを投与したところ、頭髪が倍増したという報告もあります。

ということで、筋トレをよく行ない、男性ホルモンの分泌が盛んになることで、筋肉の発達が促進されて筋肉質になりやすい半面、頭髪はさびしくなる可能性がありますが、逆に成長ホルモンの分泌も活性化されれば、頭髪が守られる可能性はあるでしょう。

※当記事は、書籍『石井直方 最終講義 筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社/2025年12月発売)からピックアップした内容をWeb用に再構成したものです。

解説:石井直方
1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。東京大学名誉教授(運動生理学、トレーニング科学)。力学的環境に関する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究。日本髄一の“ 筋肉博士” としてテレビ番組や雑誌でも活躍した。『筋肉の科学』『トレーニングのヒント』(小社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)、『スロトレ』(高橋書店)など著書・共著は多数。ボディビルダーとしてもミスター日本優勝(81・83年)、IFBB ミスターアジア優勝(82年)、NABBA 世界選手権3位(81年)などの成績を収めた。2024年8月20日、69歳で逝去。正四位瑞宝中綬章を受章