藤波辰爾は1989年に現役続行が危ぶまれるほどのアクシデントで、復帰まで約1年3カ月という長期欠場に追いこまれたことがある。
超巨漢のビッグバン・ベイダーとの一騎打ちで腰を痛打。その瞬間、激痛が走ったというが、ちょうど師匠であるアントニオ猪木さんが参議院議員選挙に出馬するため欠場中。自分まで休むわけにはいかない、という責任感で試合に出場しつづけたことで状態はさらに悪化。病院では椎間板ヘルニアと診断された。

「ベイダー戦で発症したのは間違いないんだけど、その1試合だけの話ではなく、それまで何年も蓄積されてきたものが、そこで爆発してしまったわけで、そう簡単には治らない。手術も勧められたけど、当時はメスを入れたら、リングに復帰できなくなるんじゃないか、という不安のほうが大きくて、手術をせずに治療することになった。
とにかく、辛かったね。腰が痛いから、夜も仰向けになっては眠れない。リビングのソファーにも普通には座れなくて、いくつも体のまわりにクッションを並べて、なんとか……という感じ。まったくくつろげないし、日常生活すらままならないのに、本当にリングに復帰できるのか?という不安も大きくなっていった。ちょうどライバルの長州力が活躍していた時期だったので、焦りもあったしね」
ただ、そんな日々で自分の体と真正面から向き合うことができた。少しでも腰に負担をかけないように意識して暮らすことで、なにげない動き方から見直せるようになった。今回の本にも掲載されている朝、起きてからベッドの上でそのまま行なうストレッチなどは、まさにそんな経験から編み出されたものである。

「昔はなにも考えずにベッドからポンっと飛び起きていたけど、腰を痛めてから、ゆっくりとベッドの中で全身の筋肉を伸ばしながら体を起こして、ベッドから降りたら、今度は立ち上がりながらストレッチをする。天気がいい日はそのままベランダに出て、手すりを利用しながら全身を伸ばす。近所の人には『朝から何をやっているんだろう?』と思われているからもしれないけど(笑)、これが毎朝の日課になっている。
これはトレーニングじゃなくて、あくまでもストレッチなので、そこまで時間をかけて入念にする必要もないし、これからトレーニングをはじめようと考えている方は、ここから試してみると、入りやすいかもしれない。朝起きてから朝食のテーブルに座るまでの流れの中に組みこめる動きだし、実際にやってみたら、文字通り、肉体が目覚めていくことがわかると思うので、トレーニングをはじめる体制も整いやすい」
寒くてベッドからなかなか出られない、というこの季節にはたしかにぴったりのモーニングルーティーンになりそうだ。藤波辰爾は2015年に脊柱管狭窄症を患った。このときは即、手術をし、翌日には痛みがまったくなくなり「なんだ、ヘルニアのときも手術すればよかった(笑)」と藤波は笑って振り返るが、どうしても後遺症が残るため、日々のトレーニングとストレッチはより必須となった。今日も慎重かつ丁寧に72歳の藤波辰爾はトレーニングを進めている(2月20日、朝7時10分公開の#3に続く)。
