2025年に結成10周年、2026年にメジャーデビュー10周年を迎えたロックバンド・PENGUIN RESEARCH。そのボーカルである生田鷹司(いくた・ようじ)は、一度は保育士として就職するも、音楽の道を諦めきれず上京し、プロのボーカリストとなった異色の経歴の持ち主。疾走感あふれるPENGUIN RESEARCHの楽曲をパワフルに歌いこなす彼は、“体”から“歌”にアプローチしたという。

「地元の高知でも趣味でバンドをやっていましたが、その時はただの素人。で、いざプロとして歌うことになった時に『全然歌えてない』っていうことに気づいたんです」
早速、壁にぶつかったという生田。そんな時、ボイストレーニングの先生から指摘されたのは、技術以前の「身体の硬さ」だった。
「当時、僕は筋トレが好きだったんですけど、ボイトレ(ボイストレーニング)の先生から『すぐ筋トレを止めて、整体に行きなさい』と言われました。それでとりあえず整体に行ってみたら、確かに声が出しやすくなって。そこから自分なりに体のことを調べていくうちに、自分の体がアウター(体の表面の筋肉)でガチガチに固められていて、体の感覚が鈍くなっていることに気づいたんです」
そこで生田は自分のポテンシャルを発揮するために、筋肉や悪い癖によってロックされてる体をまず“解いてあげる”ことに尽力したと話す。
「僕がやっているボイストレーニングは“ボイスネス”といって、声や歌に対して体からアプローチをしていくというもの。先生から『胸のあたりの筋肉が硬いから、ほぐしてあげると呼吸がしやすくなるよ』とアドバイスをいただいたら、整体でそこをほぐす。そういうことを繰り返していくうちに、だんだん声が出るようになっていきました」

現在は筋トレをほとんど行なわず、歌唱に必要な筋肉はすべて歌うことによって鍛えているという生田。中でも彼が重要視しているのが、喉の“インナー”の筋肉だ。
「僕がそう呼んでいるだけで、正式にはどんな名前の筋肉なのかは分からないんですけど…。声が出ない原因の一つに“喉仏を固くロックしてしまう”というケースがあるんです。そこで、インナーの筋肉を使って喉仏を下げ、喉の空間をしっかりと広げてあげる。そうすると、ちゃんと声が出せるようになるんです」
ハードなライブを完走するための体力維持についても、生田の回答は意外なものだった。「特に何もしていないです」と笑うも、彼が極限まで自分を追い込む場所がある。それが、ツアー直前のリハーサルだ。
「ライブで一番大事なのは“喉を枯らさずにちゃんと歌いきること”。そのために必要な呼気の量と喉のインナーの筋力を、リハーサルで作り上げます。ツアー前に大きなリハーサルが3、4回あるんですけど、そこで本番の120%ぐらいの勢いで歌いまくって、一度コンディションをマイナスまで落とす。そこから回復させることで、前よりも声が出るし長持ちするようになる。僕はこれを“超回復”って呼んでいます。なので、リハーサル初日は本当にしんどいです(笑)」
ガジェットマニアだという生田は、コンディションを整えるためにさまざまなグッズも試しているという。その一つが、MYTREX(マイトレックス)のREBIVE ZEN(リバイブ ゼン)という筋膜リリースガン。ライブにも必ず持参するという。

「リハーサルと本番の間に体を動かしてないと血流が悪くなっちゃうんですが、動き回って余計な体力は使いたくない。なので、REBIVE ZENを股関節のトリガーポイント(筋膜が硬くなった部分)に当てて、下半身の血流を良くしたり。デスクワークの方も長時間座っていると体が固まってしまうので、おすすめのアイテムです」
体からのアプローチで歌唱力を高めていった生田。そんな彼だが、ライブをする上でもう一つ大きな壁があった。それは、プレッシャーを感じやすい性格だという。
「小さい頃から本当に“緊張しい”で、人前で話そうとすると顔が真っ赤になっちゃうタイプでした。メジャーデビューしてからも緊張で喉カラカラになってしまって、ベロ(舌)もパキパキになって、声が出ないということが多くて。それで『そもそもなんで緊張するのか』って考えたら、僕は『失敗したくない』というプレッシャーを背負っていることに気付いたんです」
「失敗したくない」という切実な願いが自らの首を絞めていた。そんな八方塞がりの状況を打破するために、彼がたどり着いたのは「究極の開き直り」とも言えるマインドコントロール術だった。
「まぁ、めっちゃ極論なんですけど(笑)、『失敗したって死にゃあせん!』って考えるようにしたんです。僕にとってPENGUIN RESEARCHは大事な居場所なので、失敗したくないし、メンバーにもスタッフにもファンにもがっかりされたくない。でもそのプレッシャーで本来の力を出せないのは本末転倒だなって。歌詞を間違えても、声が出なくなっても死にはしない、まだ次がある。歌詞を覚えたり、体を整えたり、やるべきことをやるのは本番の前までで、本番は『もし失敗してもどうでもいいです!』って心を解放する。そう考えるようになってから、ド緊張することはなくなりました」
大切な居場所であるステージを守るため、自らの体と向き合い、「死にゃあせん!」という境地でステージに立つようになった生田。解き放たれたその歌声が、10周年を経てどこまで進化を遂げていくのか、今後の活躍からも目が離せない(後編へ続く)
