「PENGUIN RESEARCHは俺にしか歌えない」ボーカル・生田鷹司がプレッシャーの中で気づいた“歌い続ける理由”とは?




楽器隊のハイクオリティーかつ熱量の高い演奏と、生田鷹司のエモーショナルなボーカルが火花を散らすライブパフォーマンスで、多くのファンを魅了し続けるロックバンド・PENGUIN RESEARCH。メジャーデビュー10周年を迎えた彼らは、5月から最新ライブツアー「Penguin Go a Road 2026 “Re:SEARCH”」をスタートさせる。

Photo by Viola Kam (V’z Twinkle)

【フォト】体から歌声にアプローチした生田のステージ

今回のツアータイトルに冠された“Re:SEARCH”という言葉にちなみ、10年の歩みの中で、自身を再探索するような経験があったかを問うと、生田は約5年前に経験したうつ病について切り出した。

「デビューする時、僕以外のメンバーはすでに音楽業界で活躍していて、僕だけが素人でした。ボーカルとして何かを為さなきゃいけないことは分かっているけど、自分で曲や詩を書くわけでもないし、何か世間に言いたいことがあるわけでもない。そんな中、MCでうまく喋れないとか、声が枯れて高い声が出ないとか失敗しまくって、周りから『このボーカリストを参考にしたら』とかいろいろ言われて。『じゃあ俺じゃなくてもいいんじゃないか』っていう葛藤がずっとありました。それで、結成から5年目くらいかな、コロナ禍に入る直前ぐらいにうつ病になっちゃったんです」

技術を磨き、体を整え、何者かになろうと必死で走ってきた。しかし生田の根底には、「歌おうと思えば、誰でも歌える」「自分は誰にでも代わりが務まる存在なのではないか」という、意外なほど低い自己評価があったという。「周囲に迷惑をかけないように」「周囲の期待に応えなければ」というプレッシャーは、彼を追い詰めた。「自ら命を絶つことも考えた」というほどの暗闇の中で、再び前を向くことができたきっかけは何だったのか。

「落ちてから1年経ったぐらいかな…それまで一切音楽が聴けなかったんですけど、外出した時になんとなく自分のバンドの曲を聴いたんです。そしたら、なんか涙がばーって出てきて。すごく“刺さった”というか、リスナーの方も『これは自分のための曲だ』って共感することってあると思うんですけど、その最上級というか…」

耳に流れて来る、過去のライブのセットリスト。その全ての歌詞に対して、生田は「これは自分の歌だ」と感じたという。

「その時聴いた中で特に印象深いのは『近日公開第二章』と『敗者復活戦自由形』と…あとは『冀望』。『冀望』っていう曲はちょっと落ちる感じの曲なんですけど、なんかもう全部に共感して『なんだ、この歌を歌えるのは俺だけじゃん』って」

活動休止状態の中、見つけた光

写真提供/ソニーミュージック

エンターテインメント業界に暗い影が落ちた時期。結成5周年を記念するツアーが中止となるなど、PENGUIN RESEARCHもまた活動休止状態を余儀なくされたが、その期間、彼はどん底で“光”を見つけた。

「もう『誰かのために生きるのはやめよう』と思ったんです。『求められていることをやる』というのを全部取っ払ってみたら、嫌なストレスが消えて、純粋に音楽を楽しめるようになりました」

その変化は、苦手としていたステージ上のMCにも現われた。

「あらかじめ用意した言葉ではなく、その瞬間に自分が思ったこと、やりたいことを優先しよう。それで何か言われても知ったことじゃない、と思えるようになりました。それこそが、バンドマンなんじゃないかって」

「結局、単純に音楽が好きで、音楽をやっている時間が一番楽しい」と笑顔を見せる生田。かつては他者の評価を気にしすぎるあまり空回りした時期もあったが、「評価のために立ち回らない」というスタンスを学んだという。しかしそれは「他者の評価を必要としない」ということではない。彼の大きな原動力は、仲間たちやファンからのレスポンスだ。

「褒められたら、もちろんうれしいです。例えば(ギターの神田)ジョンさんの曲を歌ってたら、ジョンさんから『いや、もうそれ!』って言われたり、(ベースの堀江)晶太から「ここのニュアンス良かったね」とか、(ドラムの新保)惠大氏や(キーボードの)よーよー(柴﨑洋輔)から「めっちゃ良いわー」って言われるのは、めちゃくちゃモチベーションになります」

「自分も良かったとこがあったら言いますけど、ドラムとキーボードは演奏したことがないのでざっくり『やっぱ生ピアノの音いいな』とか『ドラムかっけーじゃん』とかしか言えなくって(笑)」。そう自嘲する生田だが、ファンからの感想は飾らないものがうれしいと話す。

「リスナーの方から『歌が上手い』って言われるより『あなたの歌がいい』って言われた方がうれしいかも。楽器もそうですけど“上手さ”って練習すれば到達できる“事実”だと思うんですけど、『好き』とか『かっこいい』はその人だけの感情だから。リスナーの方からそういう感想をいただくとすごくうれしいですね」

4月22日には、デビュー10周年を記念したフルアルバム「雨天続行」がリリースされる。その中でも、特に聴いてほしい一曲を尋ねると、彼は神田作曲の「SLAVE OF MYSELF」を挙げた。

「普段のレコーディングではあえて抑えるような“エモさ”を、今回はライブに近い熱量で出しました。感情を吐き出すという表現に挑戦した一曲なのでぜひ聴いてほしいですね」

今の自分は「中古の安いギター」

Photo by Viola Kam (V’z Twinkle)

気づけば10周年。「数年前の自身を“未完の楽器”だとしたら、今の自分はどんな楽器だと思うか?」。その問いに、生田は少し考えてから「中古の安いギター」と答えた。

「やっぱり自分は何十万もする高級な楽器じゃない。生まれながらにして歌が上手かったわけじゃなくて、たくさん歌い込んで、いろいろ試して、それでなんとか一人前の楽器になれた。日々、声の出方も変わるし、乾燥しているかとか、どれくらい寝られたかとか、食事はいつ何を食べたかとか、そういうものにものすごく振り回されるので、めちゃくちゃムラもある。ただ試行錯誤を重ねてきたからこそ、他の人にはまねできない、自分だけの歌を歌えているという自負はあります」

自分という“唯一無二の楽器”を鳴らし続ける生田。デビュー10周年という節目を迎え、あらためて今後の目標を聞いた。

「すごいざっくり言うと、一生音楽で飯を食っていきたい。このバンドで、生涯現役でいたい。それを成し遂げられる人って実は多くないし、難しいことだと思っています。だからこそツアーを回って、音源を出して、いろんな試行錯誤を繰り返しながら死ぬまで音楽をやっていきたいですね」

最後に、この記事を読んでいる読者へ、彼らしい飾らないメッセージをくれた。

「この記事を見て、『あ、こんな変な奴がいるんだな』と少しでも気になってくれた方がいたら、ぜひライブに来てください。頑張って鍛え上げた歌声が聴けます!」

4月22日にリリースされる10周年記念アルバムのタイトルは「雨天続行」。たとえ土砂降りの雨の中でも、一歩ずつ、泥臭く、けれど「楽しい」と笑いながら彼は進み続ける。