空港パニック→50時間移動 東京女子プロレスが見せた海外遠征での判断




今年の3月、東京女子プロレスはテキサスで試合を行なった。

昨年に続く遠征で、もはやアメリカでは「テキサス女子プロレス」を名乗ったほうがいいんじゃないか、というレベルの大盛況ぶり。山下実優が個人で世界中を周る一方で、東京女子プロレスは「チーム」として海外に渡り、現地で日本の女子プロレスをパッケージとしてお届けしている。実際、海外のファンが熱望しているのはそういう形であり、前週まで日本で繰り広げてきた闘いの「続き」を生で観られることに熱狂している。配信によりリアルタイムで日本での闘いを見ているファンにとっては、最高の展開、なのである。

【写真】東京女子プロレスのリーダー・山下実優

今回も大盛況のうちにテキサス決戦は幕を閉じ、選手たちもしっかりと手応えを感じとって、意気揚々と帰国の途についた……はずだったのだが、ここでアクシデント発生。なんとアメリカの空港職員のストライキと運悪くぶつかってしまい、空港はもう大パニック状態になっていたのだ。

まさかのアクシデントにより、地獄の『50時間フライト』を強いられた東京女子プロレス勢。空港での記念写真(?)もボロボロの状態に……

「本当に大変な状況でしたね。たくさんテレビ局のカメラも取材に来ていたので、英語がしゃべれる選手に『取材を受けてこい! 世界中に東京女子プロレスの名前をアピールするチャンスだぞ!』なんて言っていたんですけど(笑)、そんな余裕があったのも最初のうちだけで、荷物検査の列に3時間も4時間も並んでいるうちに、私たちが乗る予定だったフライトの時間が迫ってきて……」

結局、もう予定していた便で帰国することは不可能に。いろいろ調整した結果、このまま2〜3日、テキサスに滞在し、仕切り直すような形で出発するのが、なんの問題もなく、スムーズに帰国できる、という話になった。

「たしかにそれがベターな方法だということはわかるんですよ。ただ、私たちは数日後に両国国技館でのビッグマッチを控えていた。帰国が2〜3日、遅れることになると、早くても試合前日、下手したら試合当日に到着することになってしまう。さすがにそれだけは避けたい、となって、私たちはあえてとんでもない旅程を選んだんです。どんなに帰途が大変になろうとも、帰国後、両国国技館に向けて十分な準備期間が取れるスケジュールを優先しました」

とにかく、その段階で最短でテキサスを出発し日本に帰国できる空席をなんとか搔き集めた結果、ヒューストンからロスに飛び、そこから一旦、ハワイを経由して日本に帰る、という旅程が組めた。それぐらいなら、まだ想定内というか許容範囲では?と思われるかもしれないが、急きょ、搔き集めた航空券ゆえ、各空港でかなりの待ち時間がある。しかもストライキによる影響はいまだ収まっていないため、待ち時間ものんびりできるわけではなく、ひたすら列に並んでいなくてはならない。予定外にハワイに寄れたのだから、ちょっとくらいは外の日差しを浴びたいところだったが『この混乱状態で空港の中に戻れない、となったら洒落にならないから我慢しよう、と』(山下)。ゆえにロスでもハワイでも、選手たちは空港内で過ごすことを余儀なくされた。

結果、ヒューストンを飛びたってから、日本に到着するまでにかかった時間はじつに50時間オーバー! なんとか帰国した選手たちは数日間でコンディションを整え、両国国技館ではこんな地獄の大移動劇があったとは誰も気づかないほど、ベストバウトの連続で興行を大成功に導いた。

こんな悪夢が頭をよぎる中、東京女子プロレスは4月にもラスベガス遠征を敢行。今回は無事に帰ってこられたようだが、この経験はきっと彼女たちをとてつもなく強くしてくれるに違いない(後編に続く)。