かっこいい体の必須条件、筋肉の「カット」って何?【コンテスト審査員が解説】




日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)の辻本俊子専務理事へのインタビュー企画。今回からは、男女に共通するポイントについて伺っていきます。そこで気になるのが、よく聞く「筋肉のカット」という要素。まずは一般的には耳にすることが少ない、筋肉のカットの意味を辻本理事に解説していただきました。

筋肉というより、脂肪をカットする

「筋肉のカット」が出ているとは、筋肉ひとつひとつの部位が皮膚の上から見えている状態のことを指します。

そのためには脂肪の薄さが「筋肉が皮膚の上から見えるくらい」であることが必要になっていきますし、筋線維が透けるほどはっきり見えていれば、カットが出ているという言い方をします。

筋肉と筋肉の間の脂肪が薄いほど筋線維が浮いて見えるので、カットが深いとか、カットがはっきりしているということになると思います。この筋肉のカットは、鍛えた体の仕上がり具合につながっていきます。

初めてこの言葉を聞いた方は「筋肉をカットするの?」と思うかもしれませんが、筋肉のカットは筋肉を切るわけではありません。どれだけ深く、ひとつひとつの筋肉や筋肉間の隙間を見える状態にするかということなので、どちらかというと脂肪をカットしていくということになりますね。筋肉のカットを出すには、脂肪を減らして皮膚を薄くするというのが一番です。

筋量が少ない人は、脂肪を落としてもうっすら線が見えている状態なのですが、筋量が多い人はそこから丸みやボリューム感が出てきます。

筋肉のカットがしっかり見えているほうが仕上がりがいいという評価になるので、コンテストにおいて大事な要素です。たとえば脚なら四頭筋など、鳥の脚のようにひとつひとつの筋線維が浮き出ていると仕上がっているなと思います。

また筋肉の丸み感や、形として浮き出ている大きさが大きいか小さいも重要です。

筋量が少なくて浮き出ている部分が小さくても、脂肪を薄くしている場合はキレイなカットが出ており、「仕上りがいい」という評価につながります。ただ、それよりもっと上の評価がほしい場合は、ひとつひとつの筋肉の丸みや膨らみが求められます。膨らみがあると、筋肉と筋肉の溝が深くなっていくので、ひとつひとつのパーツがもっとはっきり出てきます。

たとえばチャンピオンクラスで言えば、木澤大祐選手や相澤隼人選手などは、ぎゅっと力をいれるとボコボコといろいろな筋肉が浮き出てきます。あれはもともとの筋肉の大きさがあるからだと思います。

木澤選手や相澤選手と同じ体重、皮下脂肪率の選手がいても筋量が少なかったら、同じように力を入れてもボコボコ感というのはあまり出てきません。筋量アップとカットを出すことを両立することで、よりかっこいい体を演出することができると思います。

◆後編では、各部位によってカットを出すポイントはあるのかを伺いました。


辻本俊子(つじもと・としこ)

JBBF(公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟)にて専務理事、競技ルール委員会委員⾧、広報委員会委員長を務める。第1回東京クラス別ボディビル選手権46kg級優勝、第5回東京ボディビル選手権大会ミスの部優勝、社会人ボディビル選手権大会マッスルの部優勝、日本クラス別ボディビル選手権大会52kg級優勝、日本ボディビル選手権大会第10回女子の部優勝、ワールドゲームス(オランダハーグ)52kg級7位などの実績を持つ。

取材・文/森本雄大