食事は1日1万kcal、80人を乗せてスクワット!? 究極のハイフィクション『筋肉島』とは【漫画家・成田成哲#1】




読者のみなさま、こんにちは。VITUP! 編集部の森本です。

ある日、社内で話題になった漫画を一読してみると、不意に見たページで度肝を抜かれました。

©成田成哲/集英社

筋肉多重式!? もはやオーバーワークの域を超えたトレーニングに励む超絶マッチョたち。それもそのはず、この作品内の出来事は「筋肉だけで発展した島」の中で起こっているのです。

登場人物も1日1万kcal以上を摂取する筋肉隆々な族長や、崖をひとっとびで横断する女の子など、信じられないほどのマッチョぶりです。そしてこの方は……まさかフィジーク界で有名な久野圭一選手?

©成田成哲/集英社

もはやリアルとファンタジーが融合した世界観に驚きを隠せません。そう、この島は名前の通り、文明や化学の代わりに筋肉だけで発達した『筋肉島』。“すべて筋肉で何とかする”というスタイルで描かれた筋肉漫画なのです。

本作を描いた漫画家の成田成哲先生は、自身もトレーニーという根っからのマッチョマン。そんな成田先生を直撃し、作品について詳しく伺いました。

◆リアルなマッチョが勢揃い。『筋肉島』のカラーイラストはこちら

『筋肉島』は究極の筋肉ハイフィクション

作者の成田成哲先生。集英社が運営する漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」にて連載中

――本作のパワーあふれる世界観に圧倒されました。『筋肉島』の発端はどのような発想だったのでしょうか。

もともと格闘漫画が好きで、筋肉をテーマにした作品案はずっとありました。具体的に企画が浮かんだのは、「素手だけで勢力争いが起こるような世界があったら」という雑談からでした。あまりよくない話ですが、現実世界では人が武器で争ったりしますよね。それを武器なしで行なうとなると、相当筋肉が発展している必要があると思いました。「武器を使うなら素手で闘ったほうが強い」というほどの筋力があれば、自然と筋肉だけで文明が発展していくのでは……と。それで「筋肉のことばかり考えている島=筋肉島」という形で構想していきました。

――筋肉だけですべてできてしまう世界を描きたかった。

はい。筋肉の可能性を表現できればと思いました。たとえば作中でも橋がなければ人が橋になりますし、何ならひとっ飛びで崖も越えます(笑)。空を飛んだりビームを打ったりはできませんが、とりあえず全部を筋肉で解決する。そういった「究極の筋肉ハイフィクション」をテーマに作品をつくっていきました。

©成田成哲/集英社

――登場人物の強烈な筋力も納得です。作中にはフィジークで実績を残されている久野選手が登場しているほか、時折ボディビルの世界観が垣間見えていますね。

そうですね。作中に登場している私(成田成哲隊員)が言っていたりしますが、結局どんなに食べて筋トレしていても、そこから洗練しようと思ったらPFCバランスを意識した食事で減量するなど、ボディメイク的な考えが必要になると思います。もし筋肉島で鍛えるなら、絶対にボディビルに近いトレーニングや食事のルーティーンが組まれるだろうと考えました。最高峰の肉体をつくるボディビルの世界観を作品に取り入れたのはそのためです。

――リアルな筋肉を描きつつ、人間離れした凄さもあるという世界観に圧倒されます。

ありがとうございます。筋肉島の世界観をつくるときは、ボディビルダーで1日に8000kcal食べる人がいれば、「数倍して2~3万kcal食べる人がいてもいいかな」と考えたり、走り幅跳びの世界記録が8m以上なら「10倍したらだいたい100mは飛べるな」など、現実を何倍も強化したような設定にするようにしています。

――その極限の筋肉を鍛える方法も人力という設定がツボでした(笑)。

そうなんですよね。鉱物を使えず、マシンや器具がない筋肉島でどう鍛えるのか考えた時、木製では代わりにならなくて「じゃあ人間か……。マッチョ重いし」という結論に至りました(笑)。そうして生まれたのが作中の“筋肉多重式トレーニング”なのです。作中のマッチョはすべてマシンを使うことなく鍛えられています。

©成田成哲/集英社

――ちなみに、作中のリアルな筋肉の数々はどのように描いているのでしょうか。

以前から格闘漫画が好きだったので、筋肉の描き方をたくさん勉強しました。今はどんな画角からでも、マッチョであれば描ける自信があります。

(第2回へ続く)


成田成哲(なりた・なりあき)
漫画家。集英社が運営する漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」で漫画『筋肉島』を連載中。過去には、盲目の主人公を描いた格闘漫画『アビスレイジ』や、ボディビルダーのチートデーをテーマにした『マッチョグルメ』を発表し人気を博した。自身もトレーニングに励んでおり、SNSでは筋トレ風景などを発信している。

取材・文・写真/森本雄大
画像提供/集英社

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