【知ってる?パラスポーツ】 視覚障害者と晴眼者が一緒にプレーする競技




不定期でお届けしている「知ってる?パラスポーツ」。今回、紹介するのはゴールボールです。ロンドンパラリンピックで日本の女子チームが金メダルを獲得した種目としてご存知の方もいらっしゃるかもしれません。陸上、水泳、テニス、柔道など、オリンピックとパラリンピックに同時に存在する種目は多数ありますが、このゴールボールは視覚障害者の球技として考案されたもので、パラリンピック独自の種目です。

ゴールボールは「アイシェード」と呼ばれる目隠しを着用した1チーム3人の選手が、鈴が入った重さ1.25キロのボールを転がして相手ゴールに入れ合う対戦型の競技です。ボールに入った鈴の音やコートに引かれた糸の入ったラインをもとに、ボールの位置や自分の位置を確認しながらゴールを狙い、ゴールを守ります。選手たちの動きは「目が見えてるのでは!?」と思うほど素早いものです。ルールは協会のホームページでも確認できるので、ここでは知っていると少し自慢できるお話を紹介していきましょう。

豆知識その一。サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、対戦型の競技は選手や審判が混乱しないように、対戦するチームのユニフォームは色分けすることがルールで定められています。しかし、ゴールボールはユニフォームに色の指定はありません。そのため、まったく同じ配色のユニフォームを着たチーム同士の試合が行なわれることもあります。

豆知識その二。ボールはバスケットボール(7号)とほぼ同じ大きさで重さは1.25キロ。男子選手は時速60~70キロのボールを投げるので、当たるとその衝撃は相当なものです。ボールは硬くて痛いのが特徴。ちなみにボールの中には鈴が2つ入っています。試合で投げ合うと結構な衝撃で鈴が潰れてしまうため、パラリンピックでは同じボールを使用するのは2~3試合程度。音がとても大事なので、すぐにボールを替えているのです。

豆知識その三。選手の目を隠すアイシェードはサングラスやゴーグルなどを取り扱うレンズメーカーで制作されています。しかし、以前は専門のものがなかったため、スキーゴーグルを光を遮断する素材で覆うなどして手作りしていたそうです。アイシェードを実際につけてみると、光が完全に遮断されているため、目の前が真っ暗で何も見えません。このアイシェードの存在によって、視覚障害者と晴眼者が一緒にプレーできる環境を生むことができるのです。

パラリンピックには視覚障害者しか出場できませんが、実は日本選手権など日本国内の大会には晴眼者の出場が認められています。ゴールボールは前述した通り、ボールが体に当たるとかなり痛いため、障害者の方が最初に始めるスポーツとしてはハードルが高めです。そのため競技人口がなかなか増えないという問題を抱えています。そこで日本ゴールボール協会は、競技レベルをより高めていくために、国内の試合に限り晴眼者の出場を認めたのです。アイシェードをつければ、条件はみんな同じになります。国内大会では視覚障害者と晴眼者が一緒にチームを組んだり、あるいは晴眼者だけのチームが出場したりということもあります。日本選手権では晴眼者のみのチームが優勝したこともあるのです。

視覚障害者と晴眼者が一緒に競技を楽しみ、競技を普及していくことで、東京2020パラリンピックでも良い結果が出ることを期待しております。もしも機会があったら、読者の皆様もボールの硬さやアイシェードで目を覆われた世界を体験してみてください。

日本ゴールボール協会→http://www.jgba.jp/

文/佐久間一彦