選ばれるのは、自分自身を知り、
理屈ではなく心で相手を動かせる人
――小村さんはデュアルメイキング構築者とのことですが、「デュアルメイキング」とは何ですか?
小村 「人としてのキャリア形成」と「今取り組むべくキャリア形成」の両方を確立することで、達成するべく未来を創ることです。自分の「土台」を可視化し未来の動き方を明確にするデュアルキャリアをベースとしたキャリア構築講座です。
――2つのキャリアを作るということですか?
小村 多くの人は目先にばかり捉われてしまい、「なぜ」を考えないんです。だからうまくいかなかったとき、他の人から横やりが入ったとき、スポーツ選手なら引退した後、ブレちゃうんですね。本来は、自分自身がこういう人間であり、こういう喜びを得る人生を歩みたいという自分軸があって、それを達成するために今やるべきことをどう取り組むかが具体化するはずです。木で例えるならば、目先の枝葉ばかり求めがちですが、見えないけどもしっかりした根を張るからこそ、キレイな花を咲かせることができるのです。
――なるほど。
小村 究極な話、人間はいつか死ぬじゃないですか。もし明日死ぬとなった時に、人生を振り返って悔いがないと思える生き方ってどういう生き方ですか? 価値観は人それぞれですから解答も違うと思います。悔いがなく、やりがいがある生き方ってなんだろう。これが明確だと、仕事もプライベートも「今」をどう考えて取り組むのかがわかりますね。
――確かに、自分が自分を意外とわかっていませんからね。
小村 「汝自身を知れ」というのをテーマにしています。自分がどうしたいのか、自分がどうなりたいのか、なぜそれをやるのか。自分自身の価値観を知るということが自分軸の土台をつくることです。
――成功している人たちは使命感をもってやっていますね。
小村 そうなんです。ひとつ例を出しますね。Aさんは『難病や移植手術する人はかわいそう。「難病を救う会」を発足して、駅前で募金活動を始めました』。Bさんは『私の子供は移植手術が必要な難病です。費用が莫大にかかります。どうか我が子を助けたいので援助をお願いします』。あなたはどちらか決めて募金をするとしたらどちらにしますか?
――Bさんです。
小村 Aさんも立派だと思いますよ。でもBさんですよね。Aさんは責任感で行動をしています。平たく言えば脳ミソで考えて動いた行動です。Bさんは自分がやらなくて誰がやるのかという心(気持ち)で動いて行動しています。決定的に違うのは当事者意識を持って行動しているかどうか。人が人を選ぶときはそういうのを察する能力が働いていたりもするんです。
――確かにそうですね。
小村 熱情・パッションというのは、その人の心からの声です。これを相手に伝えるからこそ、理屈ではなく感動させられるのです。人間なら誰しも強みがあります。気づいていなかったり、自信がないという気持ちが先にきて出し切れていなかったりするだけです。デュアルメイキングでは、自分の強みを可視化し、深掘りし、自覚するワークです。自分自身の人生観、使命感、心からの動き、当事者意識、熱情、自分の生き方、そして自分軸。自らが自らの事を知ることで、今やるべきミッションへの原動力になります。
――これは最近発明されたのですか?
小村 メンタルトレーナー時代よりも前から、私は対峙した人の心の声を感じることができています。人の相談に乗るのも好きだったので、客観的に背景から方向性を読み取れるんですね。今まで私は雑談やコミュニケーションを通して、整えるということをやってきたのですが、ワーク形式で、当人が絞り出し、また振り返ることができるものも必要だと思い作りました。
――それは興味深い。最近では、このすごラボの空間以外でも活躍されているんですよね。
小村 長年、20歳前後の若者を対象に就職や未来のコーディネートをしてきましたが、他の年齢層や、普段とは違う悩みなどの相談に答えることもできるかなと自分を試したくなり、昨年「Yahoo!!知恵袋」にある悩みを片っ端から解答してみました。すると、1ヶ月半で100ベストアンサー達成し、ベストアンサー率は58%です。半数以上の回答でベストアンサーもらえたので私の自信にもなりました。
――それはすごい。
小村 さらに今年からチャレンジ企画として、生放送で悩みを解決する番組『すごカフェ』(http://ch.nicovideo.jp/sugocafe)をニコニコ生放送で始めました。月2回のペースでゲストを呼んでリアル悩み相談や書き込み相談の対応などを生配信しています。これも自分がどういう人なのかを知ってもらいたいということからですね。
――面白いことをやっているんですね。最後にこれからの展望などはありますか?
小村 スポーツ業界への就転職がもっと双方スムーズにマッチングできるようにするため、『すごジョブ』というスカウト式の人材バンク的なポータルサイトを作りたいと思っています。私がスポーツ業界の人事課のような立ち位置になり、人材が欲しい球団や企業に具体的な人材像を聞き、育成し、方向性が確立している若者を紹介するマッチングですね。さらにスカウト式と同時に、ドラフト式もやりたいと思っています。
――人材側が自分を積極的にアピールして手を挙げてもらう形ですか?
小村 はい。今まで私個人に連絡が来た球団や企業と、教え子を見てのマッチングと同じことなのですが、教え子でなくても優れた子もたくさんいるでしょうし、教え子に該当者がいない場合は今まで繋げられなかったケースもありました。多くの方々をスムーズに適材適所にマッチングできる機能があると皆ハッピーではないかと思っています。スポーツを通してみんなハッピー、略して『スポッピー』。これが企業理念です(笑)
NPO法人スポーツ業界おしごとラボ 理事長。一般社団法人ファンダシオン理事、スポーツジョブライセンス認定委員長。小村スポーツ職業紹介所 所長。スポーツメンタルトレーナーとして多くのアスリートをサポートし、2006年に総合学園ヒューマンアカデミー「スポーツマネジメント講座」を立ち上げる傍ら、数百名の方向性を確立する個人プロデューサーとして活動。人生のゴール設定と今やるべきミッションを明確にする「デュアルメイキング」構築者として多くの人をアドバイス、業界へ橋渡しをしている。
NPO法人スポーツ業界おしごとラボ HP→http://sgolab.or.jp/
聞き手・撮影/木村雄大