七種競技は選手一人ひとりにストーリーがある
――七種競技は一日目に100メートルハードル、走高跳、砲丸投、200メートルの4種目、二日目に走幅跳、やり投、800メートルの3種目を行ないます。一つひとつが終った後の回復や、二日目の回復はどのようにしているのでしょうか?
津吹:年を取ったからか、最近は筋肉痛が2日後に来るんですよ。だから土曜、日曜と試合をして、月曜日にまとめて筋肉痛がくるので、競技中は、筋肉痛はないんです(笑)。でも基本的に疲労は、ある程度しか回復できないので、あとは集中して疲れている状態でもどうやって動くかということを考えていますね。具体的に何をするかというと、やっぱり食事とかアイシング。大会が終わった直後にしっかりクールダウンをして、カステラとか甘いものを食べて、しっかり回復するようにしていますね。
――そういうケアは大事ですね。4種目、3種目と一日に行なうので、合間のエネルギー摂取も大事ですよね?
津吹:そうなんです。競技中に食べるものはカステラか、投てき種目の前はおにぎりとかも食べます。あとはジュースとかゼリー系とかが多いですね。
――糖質を摂るようにしているのですね。どうしても七種競技は時間も長いし大変なイメージがあります。
津吹:競技の認知度が低いので、単純に七つもやるのは大変そうって思うかもしれないんですけど、見る側の人には一番いい種目だと思うんですよ。
――それはどういうところが?
津吹:たとえば100メートルの桐生(祥秀)選手を見るために大阪まで行くとするじゃないですか。そうすると、予選で10秒、準決勝で10秒、決勝は9~10秒とか、30秒くらいしか見られないわけですよ。でも七種とか十種の場合は、朝から一種目のハードルがあって、次は走高跳、昼過ぎから砲丸投があって、そろそろ帰ろうかなという頃に200メートルを走るんです。だから一日中見られるので、お客さんにとってもお得感があると思うんですよね。
――確かにその通りですね。
津吹:七種目やるだけに選手一人ひとりにもストーリーがあるんですよ。たとえば、この選手は走り系が得意だけど、砲丸投で頑張ったから明日の種目にも期待ができそうとか、最後の800メートルで何秒を切れば点数が何点になる、という感じでストーリーがあるので、そういう面白さとかもSNSを使ったりしてうまく発信していけたらと思っています。
――混成競技ならではの面白さがあるわけですね。
津吹:やる側からすると、私は飽きっぽい性格なので、いろいろな練習をするというのは逆に合っていると思います。一つのことだけをやり続けるよりも、いろいろなことをやりながらベースを高めていって、結果的に全部がよくなっていくという練習方法のほうが自分には合っていると思います。
――七種目あって大変な分面白さもあるわけですね。
津吹:混成競技って競技中もあまりギスギスしないんです。同じ種目の選手たちはライバル心がすごく強いと思うんですけど、混成選手は自分の得意種目があるので、ハードルで負けても次に頑張ろうってなるので、ギスギスしないでアットホームな感じなんですよ。他の種目よりも居心地がいいというか、個人的にはすごく好きです。
――十種競技の元日本チャンピオンでもある武井壮さんが、十種や七種をやっている選手は練習量も違うし、基礎体力が違うということをおっしゃっていたのですが、ご自身でもそう感じる部分はありますか?
津吹:やっぱり日頃からいろいろなトレーニングをしているので、飲み込みが早いというのはあると思います。十種にしても七種にしても、そもそもの運動神経が良くないと難しい部分がありますし、走る専門とか投げる専門の選手よりも、運動神経とか器用さは求められると思っていますし、それによって備わっている部分もあると思います。
取材&撮影/佐久間一彦
1994年9月14日生まれ(おとめ座)。神奈川県出身。東京学芸大学所属。中学時代から陸上競技をはじめ、弥栄高校時代には七種競技、走高跳でインターハイに出場。走高跳では全日本ジュニアで4位。『超人女子』では陸上七種競技の選手としてのポテンシャルを発揮して、数々の種目で優勝を飾っている。
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