W杯で日本と対戦するセネガルに行ってみた~②スポーツ&草の根サッカー事情編~




ついに開幕したサッカーW杯2018年ロシア大会、初戦でコロンビア代表を撃破した日本代表にとって、同じく初戦を白星で飾ったセネガル代表との第2戦は非常に大事な一戦。そのセネガルの強さを独自の視点から探る本連載。今回は、セネガルのスポーツ事情と草の根レベルのサッカーのお話をお届けする。

アフリカでスポーツと言えばサッカー。だが、セネガルの場合、必ずしもサッカーが国技とは言い切れない。W杯2002年日韓大会でベスト8に進出したが、実はその時が初出場。以来、16年間、W杯の舞台から姿を消しているのである。

代表チームが好成績を残してきたのは、むしろ、バスケットボール。セネガルでは、至る所にバスケットボールのリングが設置されている。

セネガルには背が高い人が多い。オランダが平均身長世界一と言われているが、果たしてそこにセネガルの統計が含まれているのかは不明だ。セネガル滞在中、会う人、すれ違う人、前を歩く人を見て、「デカ!」と叫ぶのが日課になっていた。ほぼ2m級のセネガル人、しかも一般人(多分)が、まったく珍しくないのだ。

観るスポーツとしては、セネガル相撲が圧倒的な人気を誇る。プロの試合は、打撃ありのテイクダウンの争奪戦。大きな大会は国立競技場で開催され、その模様は生放送で伝えられている。

観客と警官隊との間に小競り合いが起きることもあるほどの熱狂ぶりだ。

それに対して、サッカーの国内リーグは、放送すらされていない。

それでもやはり、サッカー熱は高い。街中には代表のスポンサーなど、サッカー関連の看板が溢れている。他のブラックアフリカ諸国と比べると少ないものの、街中で子どもがサッカーに興じている光景を目にすることもある。国外で活躍する選手を輩出する名門アカデミーも、いくつか存在する。

そんなセネガルのサッカーの特色は何か? 近年、代表レベルのサッカーは、違いが少なくなっていると言われる。それならば、むしろ草の根レベルのサッカーの方が、国ごと地域ごとの特徴が色濃いかもしれない。そう信じて調査を進めたところ、かつての奴隷貿易の拠点、ユネスコ指定世界遺産のゴレ島にて、そのヒントを発見した。

ゴレ島について記すと長くなるので、歴史の話は割愛。VITUP!が注目したのは、この広場。

サッカーゴールが設置されているが、グラウンドらしき敷地のほぼ中央に、バオバブの木が鎮座しているではないか! バオバブは、アフリカを象徴する樹木。大きなものは、文字通り巨木と呼ぶにふさわしい太さと高さに達する。

わらわらと人が集まり、ボールを蹴り始められた。なにやら真剣。あれ? 誰か吹いていますけど、審判ですか? バオバブがいい位置にありますけど、これ、試合ですか?

聞けば、ゴレ島内で働く社会人のチームの大会とのこと。プレー中にタッチライン沿いを羊が集団走行しているが、半ば(?)公式戦だ! ラインは引かれていないが、壁と建物で仕切られた内側がフィールドオブプレー。建物の位置の関係で、長方形ではない。壁やバオバブを利用した(?)ワンツーパスが頻発!

あれ? この青シャツの人、どこかで見たような……。セネガルサッカー協会会長、オーギュスタン・サンゴール氏だ! ダカール市ゴレ区区長でもある会長が、区役所チームのメンバーとして出場しているではないか! なお、この日の会長は、手元の集計で3本のシュートを放つも無得点。後半途中で交代退場、そのままビニール袋に用具を詰めて、どこかへ消えて行ってしまった。試合後に控えていた公式行事に備え、シャワーを浴びに帰宅した模様である。

壁がないサイドは、石垣みたいな感じの仕切りがタッチライン。この鳥、野生の海鳥には見えないが、放し飼いなのだろうか?

石垣サイドのコーナーキックは、こんな感じ。特別ルールでピッチの幅が広くなる。なお、壁サイドからは、スローインもコーナーキックもなしというルールらしい。

こうしたセネガルのスポーツ事情と、1試合しか見ていない草サッカーの試合から、強引な考察を行った結果、以下の特色が見えてきた。

①セネガル人はデカく、フィジカル勝負を好む。②グラウンドのコンディションの変化に対する適応能力が高く、独創的なプレーを得意とする。③石垣から落ちる、木に衝突するといった危険を顧みず、勇敢にプレーする精神力の強さを持っている。

やはり、セネガル、侮れない。

なお、セネガル相撲と現地のサッカー事情については、日本セネガル戦が行われる6月24日、日本テレビの試合直前特番でも取り上げられる予定である。

次回は、セネガルの女子サッカーと、砂のグラウンドでのサッカーについて報告したい。

取材&文&撮影・木村卓二