52歳女子フィジーカーが見つけた新たな自分。その姿はまさにフィットネスの鑑




例年は10月の日本女子フィジーク選手権でシーズンを終えるところ、今年はゴールドジムジャパンカップ2023(12/10開催)にも出場し、2か月以上長いシーズンを過ごした矢野かずみ。本来、シーズンが長引くと体にも負担がかかり、メンタルを保つのも容易ではない。だが、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)のトップ選手である彼女があえてこの時期まで戦い続けたのには、トップ選手がゆえの柔軟さと明確な狙いがあった。

【フォト】ジャパンカップのステージで今年の集大成を見せた矢野

「私はバルクアップが課題と言われているので、とにかく筋肉を大きくするために、今までタンパク質を摂りすぎていたと思います。だから胃腸の調子がずっと悪くて、オフの期間は朝起きるのもつらいし体がダル重いという感じでした。そこで今年は、減量中の食材やPFCバランスを変えてみたら、うまくハマってどんどん尻上りに調子が良くなりだしたんです。これはもう少し続けてみたほうが、このまま増量期に入るよりもさらに良くなるかなと思ってジャパンカップ出場を決めました」

結果として、ウーマンズフィジークとボディフィットネスの両方で優勝。2021年のミス東京(東京選手権優勝)であり、今年の日本選手権ファイナリストでもある彼女にとってある意味必然の結果ではあるが、今シーズンはフィジーク一本で大会出場を重ねており、ボディフィットネスにもエントリーしたのはやや意外であった。

「理由は二つあり、まずは、自分がポージング指導をしている生徒さんたちに見本を見せたいという思いがありました。そしてもう一つの理由は、昨年のグランドチャンピオンシップスで7位に終わってしまっていたことです。6位以内に入れば決勝審査でTウォークができるのですが、ぎりぎりでそれが叶わずに未練が残っていました。満足のいく仕上がりとポージングで、もう一回ボディフィットネスをやり切りたいという気持ちがありました」

背中を見せつつ、競技者として少しでも上を狙い続ける、まさに女子フィットネス界の鑑。だが、金メダルを2つ獲得したとはいえ、準備期間の短さもあってか「自分でポージングをしていても安定感がないというか、迷いながらのステージになってしまいました」と課題を残し、満足はいっていない。今後も二刀流での挑戦は続きそうだ。

「昔から、世界にいくならボディフィットネスでいきたいと言っていて、実際に2018年の世界選手権や2019年のアジア選手権には、ボディフィットネスで国際大会に出ています。その世界選手権が来年は東京で開催されるというニュースを見てからは、『もう一度世界にいってみたい』という気持ちが出てきました。ただ、今回の反省として準備期間をもう少ししっかりとらないと難しいなとは思っています」

はたして来シーズンは、ウーマンズフィジークでの完成度を高めるのか、ボディフィットネスで世界を見据えて戦うのか。あるいは、両刀で挑むのか。今年1年の新たなチャレンジで得た大きな収穫を片手に、矢野かずみは進化を続けていく。

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