【渡辺華奈のデートするならジムがいい 第79回】思い出の試合。団体戦は熱い!




前回に引き続き、読者の皆様からの質問に答えていきたいと思います。質問はこちらです。

 

Q.柔道時代、MMA時代問わず、思い出に残っている試合ベスト3を教えてください。

いろいろ思い出に残っている試合はあるのですが、いざベスト3と言われると難しいですね。ベストかどうかは別として、思い出に残っている試合をピックアップしてみたいと思います。

 

柔道時代、自分は団体戦が結構好きだったので、所属のJR東日本が初めて全日本実業柔道団体対抗戦で準優勝した大会が印象に残っています。JR東日本は昨年、全日本で初優勝したのですが、それまではこの2016年の準優勝が過去最高の成績でした。

 

2016年は自分の現役最後の年で、自分たちが最年長だったので、なんとか結果を残したいと思っていました。それまでJRは、グループ会社に社員を分けて、各自で練習をして、試合のときだけ集まる感じだったため、あまりチーム感がなかったんです。この団体戦の1年くらい前から、みんなが同じ職場で、道場も新しくできて、同じ寮に入ってという形になり、チームの一体感が生まれました。このとき、自分は先鋒として全試合に出場しました。優勝できなかったことは残念でしたが、JR東日本として過去最高の成績を残すことができた嬉しさもありました。

全日本実業団体で準優勝したとき

 

柔道は基本的に個人競技なので、個人戦のときは本当に自分ひとりの闘いです。個人戦の場合、勝っても喜んでくれるのは、自分以外には家族や一握りの人だけです。これに対して団体戦は、チームのみんなで同じ目標に向かって闘うので、試合で勝つとたくさんの人が喜んでくれます。みんなで一つの方向に向かっていく感じも、青春ぽくていいなと思っていました。ずっとチームスポーツをやっている人にとっては、普通の感覚なのかもしれませんが、個人戦とは違うプレッシャーも新鮮で自分は好きでした。

 

団体戦といえば、高校時代にも思い出に残っていることがあります。後輩の中村美里は、オリンピックに3度出場して、世界チャンピオンにもなっている選手です。高校1年生から講道館杯で優勝するくらい強い選手で、勝っても負けてもまったく表情を変えません。そんな中村が団体戦の全国の決勝で負けたときに、個人戦では見せないような感情を見せたことがあって、その姿がカッコイイなって思ったんです。世界を獲るような選手が高校の団体戦で負けて泣くくらい、チームのことを大事に思ってくれているということに感動したことを覚えていいます。

 

こちらは高校時代。前列左から2人目が中村美里。その隣が自分です

 

ここからはMMAで思い出に残っている試合を紹介します。一つは2019年12月のベラトール・ジャパンでのイララ・ジョアニ選手との試合です。MMA転向後、海外の強豪選手との試合はこのときが初めてで、自分の力を知る機会となりました。それまでは勝てていたけど、実際には井の中の蛙で、世界には通用しないかもしれない。そんな不安もあるなかで、勝つことができて、やってきたことの答え合わせができました。結果的にこの勝利で、ベラトールとの契約につながりましたし、より世界に出ていきたいという気持ちが高まった試合でした。

 

他に印象に残っているのは、やはり負けた試合です。リズ・カムーシュ選手との試合は、MMAで初めて負けた試合で、すごく学びがあったし、自分の転換期となりました。また、昨年ハワイでおこなったイリマレイ・マクファーレン選手との試合も、負けて悔しかったけど、見ている人が退屈しないような、いい試合ができたと思っています。マクファーレン選手は元チャンピオンで、いつか闘いたいと思っていた選手です。そんな選手とスイングした試合ができたことが印象に残っています。

 

いくつか印象に残っている試合をあげさせてもらいましたが、試合の後はいつも「ああすれば良かった」「ここが良くなかった」という反省、課題が残ります。きっと現役でいるうちは心から試合に満足できることはないんだと思います。

 

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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW