タンパク質摂取における「ゴールデンタイム」の誤解 筋トレ直後のプロテインだけでは筋育は達成できない




“筋育栄養士”竹並恵里さんによる集中講座。タンパク質摂取の「ゴールデンタイム」について解説してもらいました。

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【動画】筋トレしてるのに「朝タン」してないの? 竹並さんが伝授するタンパク質摂取のポイント

筋肥大しやすい状態は、筋トレ後24時間は続く

今回はトレーニング界で信奉される「ゴールデンタイム」についての誤解というテーマでお話したいと思います。

ゴールデンタイムとは、筋トレ後に生じる、筋肉の合成が促進される時間帯のこと。筋トレの刺激によって、筋肉のタンパク質(アミノ酸)に対する感受性が亢進されるために起こる現象です。トレーニーにとっては、まさに夢のような時間ですよね。

トレーニングの現場では、ゴールデンタイムは筋トレ直後から1時間くらいと考えている方が多く、このタイミングを逃さないようトレーニング直後に飲むプロテインを常備しているトレーニーはたくさんいらっしゃいます。

図1

しかし、図1を見てください。筋トレによる筋肉の合成促進効果がどのくらい続くかを示したイメージ図ですが、じつはこの効果は意外と長く続くことが報告されています。確かに、筋トレ直後あたりがもっとも高くなるのですが、筋トレ後24時間が経過してもまだその効果は持続していると考えられています(48時間後まで続くという報告もあります)。

したがって、合成促進効果がもっとも高くなる筋トレ直後(狭義のゴールデンタイム)にプロテインなどでタンパク質を多めに摂取しておくことは、筋育の栄養戦略的には正解です。しかし、「これさえやっていればOK」という誤解はNGです。

筋トレ直後のプロテインを重視するあまり、その後の食事のタンパク質摂取がおろそかになってしまっている方を意外と多く見かけますが、これでは筋育は達成できません。筋育の効果を最大限に引き出すためには、直後のプロテイン摂取以上に、合成促進効果が続いている少なくとも筋トレ後24時間(広義のゴールデンタイム)に摂取する「総タンパク質摂取量」のほうが重要になるからです。

筋トレ直後のプロテイン摂取で安心するのではなく、その後24時間の食事も決して手を抜かず、3度の食事プラス間食で必要なタンパク質量をしっかり確保してください。日常的に筋トレを行なっている人であれば、結果的にすべての食事を大切にするということになるでしょう。

筋育は1日にして成らず。せっかくがんばったトレーニングを無駄にしないためにも、筋肉が喜ぶ食事をつねに意識していきましょう。

【動画はこちら】


竹並恵里(たけなみ・えり)
管理栄養士、健康運動指導士。専門は多世代に対応した「筋育栄養学」。プロテインでおなじみ「ザバス」の研究開発やオリンピック選手の栄養サポートに従事した後、筋肉から健康を考えるため、東京大学大学院の博士課程で“筋肉博士”こと石井直方氏(東京大学名誉教授)に師事し博士号を取得。現在は東京大学で特任研究員として勤務しつつ、専門学校などでも栄養学の講師を務めている。著書は「筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典」(ナツメ社)、「進化系!筋肉男子の栄養学」(ベースボール・マガジン社)、「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」(ナツメ社)など多数。

構成/森本雄大
資料提供/竹並恵里