Bリーグナンバーワンマッチョ男子・小原翼② 【人物クローズアップ「筋の旅人」】




Bリーグナンバーワンの筋肉マン・小原翼選手(横浜ビー・コルセアーズ)インタビューの第2弾。筋肉、筋トレへの意識が大きく高まったのは、筑波大学時代のこと。その背景にはある出会いがあった。

「その筋肉に意味はあるのか?」という人もいるけど
筋肉をつけて以前よりも動けるようになった

中学3年から世代別の代表(候補)にも選ばれ続けてきた小原選手は着実に成長を遂げ、横浜高校卒業後には筑波大学に進学。在学中にインカレ3連覇を達成し、2017年2月には学生でありながら富山グラウジーズの特別指定選手としてBリーグデビューを果たす。“マッスル翼”の筋肉は、筑波大学時代に大きく成長したのだった。

小原:高校のときから身長はあって、他の選手と比べたらがっしりしているほうだったとは思います。ただ、これだけ伸びたのは大学3年、4年のときが大きかったと思います。

――その時期に何があったのですか?

小原:一言で言うと、いいトレーナーに出会ったということです。筑波大は体育専門学部があって、運動生理学や運動学、トレーニング学など、みんなそういう勉強をするんです。勉強をしていると、「これはもっと今のトレーニングに生かせるんじゃないか?」とか、「このトレーニングは本当に正しいのか?」とか、いろいろなことを考えるようになります。疑問に思うことはトレーナーとも話をさせてもらって、相談に乗ってもらったりしているうちに、同じ筑波大学分子筋生理学・武政研究室の白井隆長さんと出会ったんです。

――その白井さんがトレーナーになったのですか?

小原:そうです。白井さんは大きくはないんですけど、筋肉がめちゃくちゃすごくて、なおかつすごく動けるんです。綱登りをやっても一瞬で登るほどです。周りの人はいまだに「筋肉がある=動きが悪い、動きが硬い」みたいなイメージがあると思うんですけど、白井さんは全然違うんです。

――使える筋肉を持っていたのですね。

小原:そうなんです。白井さんとはトレーニング場で会うたびに話をしていたんですけど、そのトレーニングを見て「この人だ!」と思いましたね。普段は大学のチームで活動しているので、本来はチームのトレーナーのもとで動くのが普通なんですが、僕はどうしてもこの人のお世話になりたいと思ったので、お願いしてチームのトレーニングから外してもらいました。そうして白井さんに教えてもらってトレーニングをしたことがきっかけで、大学3年、4年で体がものすごくデカくなったんです。

――体重や体脂肪率にも変化が表れましたか?

小原:それまでは94~95㎏をずっと行ったり来たりしていて、体脂肪率は12~13%くらいです。それが白井さんとトレーニングをするようになって体脂肪率がギュッと落ちて、逆に体重は3㎏くらい増えました。体重が100㎏近くまでなって、体脂肪率はピークのときは7%くらいでしたね。

――純粋に筋肉量でウエイトアップしたのですね。

小原:僕自身そんなにバスケットボールがうまいわけではないので、「その筋肉に意味はあるの?」とか、「その筋肉をもっと生かせよ」みたいな言われ方をすることもあります。でも、そうやって言う人は、今の僕の姿しか知らないからです。筋肉がない頃と比べたら、圧倒的に動けるようになっていることを自分ではわかっていますから。今しか知らない人は「もっと筋肉を生かせ」と言いますけど、筋肉をつけたから今ぐらい動けるようになったんです。筋肉をつけたことで以前よりも圧倒的に動ける体になったと思っているし、そこには自信があるので、あとは結果につなげていきたいですね。

――4番のポジションだと外国籍選手とのマッチアップが多くなります。体の大きい外国籍選手と対峙する上で、どういうところを気にかけてトレーニングをしていますか?

小原:日本人が外国籍選手に当たり負けするのは当然みたいに思われているのもすごく嫌ですよね。やっぱりそういう見方を変えたい。NBAプレーヤーってみんなカッコイイ体をしているじゃないですか。筋肉がついていてバスケットボールもうまい。でも日本人選手はすごい体をした人はあまりいません。なんでNBAプレーヤーの体に近づけようと思わないのかな?って僕は思うんです。まず自分の体をNBAプレーヤーに近づけてみて、そうしたらどんな成果があるか表現したい。外国籍選手にも当たり負けしたくないという気持ちは常に持ってトレーニングをしています。

――では、バスケットボールではどの筋力が一番大事だと思いますか?

小原:下半身の筋力はすごく大事だと思います。NBAの選手だと線が細くても、足元はしっかりしていて最後にダンクに持っていったりするので、そういうのを見るとやっぱり下半身は大事だなと思います。

――下半身というと大臀筋や大腿筋ですか?

小原:大臀筋でしょうね。ケツだと思います。NBAを見ても思うんですけど、足はシュっとしていてもみんなケツは相当デカイんですよ。それでいて上半身もデカイという。見た目もカッコイイし、それでバスケットでも通用するんだったらああいう体になりたいと思って日々トレーニングをしています。

――バスケットボールの重要な能力であるジャンプ力を生み出すためには、どんなトレーニングが効果的でしょうか?

小原:スクワットですね。ジャンプ力は大臀筋です。あとは上半身の腕の振りというのも、30パーセントくらい影響すると言われていますが、ジャンプ力を高めたいならスクワットやデッドリフトで下半身を強化することでしょうね。パワーリフティングの選手ってすごくジャンプ力があるんですよ。それは大臀筋、下半身の力がすごいからだと思います。ウエイトリフティングの三宅宏実選手とかも、垂直跳びはすごく跳ぶそうなんです。パワーリフティングの選手がそれだけ跳ぶというのは大臀筋の力だと思うので、ジャンプ力をつけたかったら、スクワット、デッドリフトという下半身を鍛えるトレーニングをしたほうがいいですね。

取材/佐久間一彦 撮影/安 多香子

小原翼(おばら・つばさ)
1994年7月27日、神奈川県出身。筑波大学在学中に特別指定選手として富山グラウジーズでBリーグでデビュー。2018-19シーズンより横浜ビー・コルセアーズへ移籍した。198㎝、97㎏。ポジションはPF。横浜ビー・コルセアーズ