1980年代の日本を熱狂の渦に巻き込んだのは、女子プロレスだった。長与千種&ライオネス飛鳥のクラッシュギャルズが大ブームを巻き起こし、ジャンルを超える国民的アイドルとなったのだ。
その一方で、クラッシュの相手を務めるダンプ松本が誹謗中傷の標的となり、憎悪の対象となっていた。しかし、どんなに嫌われても悪役を貫き通したダンプの生き方には、現代にも通じるメッセージが込められているのではないだろうか。そのダンプの半自伝的ドラマが完成。Netflixにて9月19日(木)より世界独占配信される『極悪女王』である。
配信を1週間後に控えた9月12日(木)、“プロレスの聖地”東京・後楽園ホールにて「Netflixシリーズ『極悪女王』配信記念イベント『ネトフリ極悪プロレス』」が開催され、超満員の観衆を前にダンプを演じたゆりやんレトリィバァ、長与役の唐田えりか、飛鳥役の剛力彩芽をはじめ、レスラーを演じたキャストが登場。また、本作のプロレススーパーバイザー・長与千種率いる女子プロレス団体Marvelous(マーベラス)の協力により、ライブでの試合も行なわれた。
会場は当時のブームを知るファンや、初めてプロレスを見るという観客も多く来場し、超満員の観衆で膨れ上がった。会場ロビーには本編にも登場する全女名物・焼きそばの屋台や、本編のスチールを展示。当時の雰囲気づくりに一役買っていた。さらには長与、ダンプはもちろん、マキ上田、ジャガー横田、ジャンボ堀、大森ゆかり、クレーン・ユウ、ブル中野、伊藤薫といった昭和の女子プロレス界を牽引したレジェンドたちもリングサイド最前列に陣取った。
そのうえで観衆の期待値の高さを表わすかのように、試合も大盛り上がり。〈唐田・剛力軍団〉彩羽匠&桃野美桜&Maria&川畑梨瑚組vs〈ゆりやん軍団〉ドレイク森松&永島千佳世&DASH・チサコ&ZAP―T組による8人タッグマッチがマッチメークされ、本編でのクラッシュvs極悪同盟の代理戦争の様相となっていたのである。
唐田&剛力、ゆりやんが実況席から応援する中、試合はヒール軍団の暴走で大荒れとなった。が、大混戦を締めたのはマーベラスのエースで長与にあこがれレスラーになり、長与のもとでプロレスがしたいとマーベラスに入った彩羽だった。一度は勝利目前でレフェリーのカウントがゆりやん軍団に阻止されるも、最後は長与直伝の必殺技ランニングスリーでドレイクにフォール勝ち(28分39秒)。試合後にはマイクを取り、ゆりやんたちが体験した“女子プロレス”を力強くアピールした。
彩羽「勝ったぞ! いまの試合で骨一本か二本いった(折れた)んじゃないかなって思うんですけど、自分たちの仕事はこれです! こんなに痛いもの、こんなに苦しいもの辛いもの、それを全部、ゆりやんさん、唐田さん、剛力さん、そして演者のみなさんが、やってくれました。ありがとうございます! ホントに2年間(練習を)やってきました。本来なら、やるべきところだけ練習すれば早かったかと思います。
でも、みんなはゼロから、もう練習生と同じくらいゼロから一緒にやってくれました。そしてようやく作品ができあがりました。ホントに、自分たちは勇気をもらいました。プロレスは、お客さんに勇気とか元気とか活力とか、喜怒哀楽をいっぱい与えなきゃいけないのに、私たちはあらためて演者さんのみんなに大事なものを教えていただきました。ホントにありがとうございます。今日やったヒール軍団も、自分たちにとっては憎いです。憎いですけど、同じ痛い思いをしてくれてる仲間だと思ってます。もっとこれから女子プロレスを盛り上げて、もっとウチら命削っていきましょう。女子プロレスをよろしくお願いします!」
その後、ゆりやん、唐田、剛力に白石和彌総合監督を迎えのトークショーがリング上で行なわれ、辻よしなりアナウンサーのMCにより、プロレスラーを演じる際に必要とされたトニーニングの秘話を披露した。
ゆりやん「私たちはホントに最初なにもできないので、まず体づくりで体を大きく強くするところから始まって、撮影の半年くらい前からですかね、長与さんとマーベラスのみなさんに教えてもらいました。まずはリングの上り方とか、ストレッチの仕方とか、前転とかから始まって、受け身をやるにはどうしたらいいかとか、どんどん教えてもらって最終的にはいろんな技を…(リング上で実際に受け身を取ってみせ、大喝采を浴びる)」
唐田「みんな仲がよくて、笑いが絶えないというか、ホントに部活みたいな感じでしたね。完全にプロレス部でした。プロレス部の中で、みんな技がちょっとずつできるようになって、それで感動して泣いちゃうとか。私はゆりやんをレトリって呼んでるんですけど、私とレトリは、ちょっとみんなより運動が苦手ということで、けっこう2人でがんばんなきゃみたいなことがあったんです。(設定上もそうだったが)実際もそうだったんです(苦笑)」
剛力「おそらく負けず嫌いが揃ったんだと思います。できないで(練習を)終わらせない。絶対にできるまでやり続けるし、たぶんみなさんの見えていないところで密かな努力というか、何かを絶対にされていたんだと思います。会うたびにみなさんどんどん、いつの間にそんなにできるようになったの?という姿を見て私も奮い立たされるというか。なかなか家では音を出せないので、動きとか形とか、そういうところは復習したり予習したり、イメージトレーニングとかはしていましたね」
白石監督「撮影前の段階で、すでに長与さんから『何人か、あと少し練習したらデビューできる子いますよ』みたいなことをおっしゃってくれたので、ホントに?っていう感じでした。撮影しながらも、ずっとプロレスの練習は続いてるんですよ。芝居のない人は道場に行って練習したりしていました。また、撮影してたら助監督さんがやってきて、『誰々さんがジャーマンスープレックスできるようになりましたよ』『次の試合(場面)で(ジャーマンを)入れようと思ってます』って大丈夫かなって。長与さんも大丈夫って言ってましたと(笑)」
プロレススーパーバイザーの長与は、プロレスラーを演じる俳優たちが道場にやってきた時から「私は役者さんをプロレスラーと呼んでいました」とのこと。それが実際、2年にも及ぶトレーニングで「確実にプロレスラーになったと思います」と太鼓判。ダンプも自身を演じたゆりやんに、「すっごくがんばった。ゆりやん見てると自分じゃねえかと思っちゃった。口の形とか、すべてがダンプ松本になってたよね。すっごい勉強したと思うよ」と絶賛した。ドラマに説得力を生み出すに不可欠なプロレスシーンの迫力と、実在の人物を演じる再現度は、ぜひ本編を見て確認していただきたい。「ガタガタうるせえんだ!『極悪女王』、見ないヤツは全員ぶっ殺すぞー!」と、イベントでもゆりやんはダンプになりきっていた。彼女たちの体当たり演技と感動のドラマをNetflixで!