「敗者髪切りデスマッチ」は1勝1敗 1988年、ダンプ松本は引退試合で因縁の長与千種にタッグ結成を要求




ダンプ松本の壮絶な人生を軸に、当時の女子プロレス界を描いたNetflixシリーズ「極悪女王」。主演のゆりやんレトリィバァ、ライバルのクラッシュ・ギャルズを演じた唐田えりか、剛力彩芽ともに筋力トレーニングや増量で肉体改造に励み、プロレスと正面から向き合ったことでも注目を浴びている。当時の女子プロレス界のリアルを振り返る当コラムの最終回は1985年からの模様に迫っていく。

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【フォト】「極悪女王」配信記念イベントの様子

85年から終わりから86年(昭和61年)序盤にかけては長与が右ヒザ半月板および内側側副靭帯損傷で欠場。試合に出られない間、新団体ジャパン女子プロレスの設立(8・17後楽園ホールで旗揚げ戦)が発表され、2月にはジャガーが引退試合を行なった。

3月には復活クラッシュがアメリカへ飛び、ニューヨークのマジソンスクエアガーデンに登場した。この大会にはダンプとブルも参戦。極悪同盟は、現地では「ザ・ジャパニーズ・デビルズ」と呼ばれた。20日の大阪城ホールでは凱旋帰国のクラッシュが山崎&立野のJBエンジェルズを破り、WWWA世界タッグ王座奪回。大森とダンプの一騎打ちは引き分けに終わった。4月5日には両国国技館に全女が初進出。長与がダンプを破りオールパシフィック王者となったが、飛鳥はデビルと引き分けでWWWA世界シングル王座奪取はならなかった。

5・13横浜文化体育館で長与と飛鳥がクラッシュ対決。30分引き分けの試合後、飛鳥は芸能活動からの撤退を宣言した。6・22後楽園では「ジャパングランプリ」決勝戦で大森が長与を破り、初優勝を飾った。

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8月21日、「タッグリーグ・ザ・ベスト」開幕戦で長与がレイ・ラニ・カイに敗れオールパシフィック王座から陥落。2日後の川崎市体育館では長与&永堀一恵を破ったダンプ&ブルが空位のWWWA世界タッグ王座を奪取してみせた。また、この大会では大森がデビルを破り、WWWA世界シングル王座初戴冠を達成した。大森はこの年のMVPを受賞している。タッグリーグの優勝は、長与&堀田祐美子。大森&宇野久子(北斗晶)を破り、新コンビでの制覇をはたしてみせた。

11月7日は長与vsダンプの敗者髪切りデスマッチ再戦で、ところも同じ大阪城ホールで決行された。こんどは長与が雪辱に成功し、ダンプが丸坊主、1年越しのリベンジを達成したのである。

87年(昭和62年)1・4後楽園ホールでは前年後半あたりから距離を置いていたクラッシュが再合体。小倉由美&永堀を破って健在をアピールした。そのクラッシュは、2・26川崎市体育館で一騎打ち。WWWA世界シングル王座挑戦権がかけられていたが、試合は引き分け。結局、飛鳥が大森に挑むこととなるも、4・15大田区体育館で王者が挑戦者を退けた。4・27大阪府立体育会館では長与がカイからオールパシフィック王座を奪回。「ジャパングランプリ」5・10後楽園ホールでの公式戦で、ダンプとブルが無効試合を展開した。6・13沖縄での公式戦では飛鳥が長与にフォール勝ち。クラッシュ対決で初めて白黒がついたのである。しかし、「ジャパングランプリ」では長与が優勝。ダンプを破っての初制覇だった。

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6月にアメリカWWF(現WWE)遠征を行なった山崎&立野が凱旋。9月14日、「タッグリーグ・ザ・ベスト」公式戦でクラッシュからの初勝利をゲットした。それでも、この年のタッグリーグはクラッシュが優勝。ブル&コンドル斉藤を破っての制覇だった。

10・20大田区体育館では長与が大森を破り、WWWA世界シングルとオールパシフィックの2冠王となった。すると試合後、ジャパン女子の神取しのぶ(現・忍)が出現し対戦をアピールするという事件が起こった。この年のMVPは長与で、12月にはデビルが長与との試合を最後に退団。デビルは、翌年5月にジャパン女子で現役を続行することとなる。

88年(昭和63年)1・4後楽園ホールの試合後、ダンプが一方的に引退を表明。1・15同所でのWWWA世界シングル王座戦で長与に防衛を許した大森も引退を発表した。ダンプと大森はタッグを組み、2・25川崎市体育館で同期クラッシュと特別引退試合。ヒールを貫き通すダンプの暴走で試合がノーコンテストに終わると、ダンプ自らがアピールし、長与とのタッグ結成を要求。長与が了承し、急きょ、長与&ダンプvs飛鳥&大森のカードが実現したのである。

ここまでが『極悪同盟』で描かれたダンプの全女での半生だ。その後はブルが獄門党を結成しヒール軍を継承。ダンプが大森とのユニット桃色豚隊(ピンクトントン)で本格的に芸能活動に進出すれば、89年(平成元年)5月に長与が横浜アリーナこけら落とし大会、8月に飛鳥が聖地・後楽園ホールで引退した。その後、ダンプ、長与はプロレスに復帰するのだが、それはまた別の話。女子プロレスはこれからも、彼女たちが積み上げてきたレガシーとともに続いていく。

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