ボディビル界のレジェンド“ジュラシック木澤”こと木澤大祐。日本ボディビル選手権で20回ファイナリストとなった生ける伝説だ。そんな男が今年、約30年にわたる現役生活に幕を下ろした。
16歳の時に筋トレを始め、18歳からコンテストに出るようになった木澤。26歳にジムを起業するもその道は険しく、医療廃棄物の回収という肉体労働に従事しながら競技者生活を送った。仕事との両立は容易でなかったものの、その中でも強靭な肉体をつくり上げて日本選手権で活躍。その姿は多くのファンを虜にした。
2017年に自身が経営するジム「ジュラシックアカデミー」をオープンすると、そこからはトレーニング環境が改善していく。今では筋トレ、競技に全力投球できるようになったが、「サラリーマン時代のきつい経験があるからこそ、今の生活があると思っています。当時、楽にトレーニングしていたらここまで競技をしていないかもしれないし、ファンの方もここまでいなかったかもしれないです」と両立に苦心した期間が大切だったと語っている。
そういった経験は競技者としてだけでなく、業界をけん引する原動力にもつながった。現在は働きながらの競技者生活を応援するプロジェクトや、ボディビルで生活できる環境をつくる賞金ありの大会開催(ジュラシックカップ※合戸孝二と共催)などの取り組みを行なっており、その影響力は非常に大きなものとなった。
そんな男が現役引退を表明して臨んだラストイヤー。最後のピースが揃ったかのように日本選手権(10月6日)で見事優勝し、有終の美を飾った。その実績により、かつては仕事の事情で叶わなかったIFBB男子ワールドカップ(12月17日~19日)にも初出場し、世界を相手に銀メダルを獲得した。走り続けた約30年間が結実し、木澤は「競技者人生やり切った」と万感の思いを語った。
今年の日本選手権では20代の選手が6人ファイナリストに入ったこと、長くトップ戦線を走ってきた木澤の引退などにより、ボディビル新時代が到来しているとも言える。レジェンドが見せてきた背中は、これからも若き選手たちの目標になっていくに違いない。