88歳を迎えてなお、鍛えた肉体でステージに立ち続ける男がいる。金澤利翼は過去17回日本一に輝き、世界マスターズ選手権にも幾度となく出場しているボディビル界のレジェンドである。
そんな彼は2024年の締めくくりとして、IFBB男子ワールドカップ(12月17日~19日)に出場。ボディビルマスターズ60歳以上級で5位となった金澤は「目いっぱいがんばれたからうれしいです。やっぱりどんな大会でも、いい成績を残そうとかそういうことを考えたらやっぱり緊張しますよね」と大会後に笑顔を見せた。
歳を重ねる中で肉体を維持するのは容易ではないが、1日3食を玄米、納豆、味噌汁で過ごすという質素な食事を続け、胃腸のケアに注力。トレーニングではむやみに高重量を扱うのではなく、ケガをしない重量で効かせるトレーニングを行なうなど工夫を凝らしてきた。そんな努力は競技で成績を残すことはもちろん、その先に掲げる目標が原動力になっている。
「今後、競技は90歳でひと区切りにして、最終目標は不可能であるとみなさん言いますけど130歳まで生きることです。おそらく90歳になると体にもっとしわが出てくると思います。それは避けられない宿命でしょう。今はいかにそれを少なくするかが課題です」
金澤は残りわずかの競技者生活を走り抜けるとともに、人生を通じて生きた証を残したいと意気込む。
「やっぱり病気をしないこと。規則正しい生活をして毎日よく寝られていますし、私みたいな選手はなかなかいないと思いますよ。130歳まで生きるという目標は挑戦でもありますが、私は自分が生きた歴史をつくりたい。とにかく一度きりの人生ですから、お金は残らなくてもいいんですけど、数々の歴史を残したいです」
大会のオープニングセレモニーでは、IFBB(国際ボディビル・フィットネス連盟)のラファエル・サントンハ会長から功績を讃えられ、記念の金メダルを授与されている。この勲章は競技者としての実績のみならず、彼が人生を通じて多くの人々に勇気を与えてきたことの結晶とも言えるだろう。レジェンドの挑戦は、これからも生涯終わることはない。