YouTubeに投稿しているボディビル解説動画が話題の筋肉マニアが、毎週一人のボディビルダーをピックアップして紹介していく連載「解体筋書」。今回は、寺山諒選手の後編です。
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ボディビルは肉体が全てではない
モンスター・寺山諒のボディビルダーとしての物語は2017年のベストボディジャパン札幌大会より始まります。16年間野球に打ち込んでいたこともあって、当時から恵まれた体格をしており、デビュー戦では見事グランプリを獲得しました。翌年からは主戦場をJBBFに移し、東京メンズフィジーク選手権に出場。バルクは確実に増していたものの、結果は予選敗退となりました。
2019年は鈴木雅さんのアドバイスにより、ついにボディビルへ転向。東京オープン(現在の東京ノービス)75kg超級で優勝し、翌年はゴールドジムジャパンカップ75kg超級で優勝。ボディビル歴わずか2年とは思えない完成度の高いアウトラインと圧巻のマスキュラーに驚いた方は少なくないでしょう。2021年には東京選手権2位、日本クラス別80kg以下級3位入賞を果たし、日本選手権ではファイナリストまであと1歩のところまで迫りました。
しかし、順調そのものに見えた競技生活に暗雲が立ち込め始めます。2022年の東京選手権、リベンジに燃えていた寺山選手でしたが、大会直前に新型コロナウイルスに罹患したことで欠場を余儀なくされます。2年ぶりの復帰戦となった2023年の同大会では、大本命として注目されていましたが、結果はまさかの4位。予想外の順位に会場からもどよめきが起こりました。その後、出場予定だった日本選手権とジュラシックカップの欠場を発表。理由は、プレッシャーや減量によるストレスからくる摂食障害でした。後に、自責傾向の強い性格から精神に不調をきたし、それが体にも現れたのだとご本人の口から語られています。
そして、相次ぐ不調を乗り越えて迎えた2024年。シーズン初戦である日本クラス別に出場した寺山選手は、それまでとは明らかに異なるフレッシュな肉体を披露したのです。例年以上に丸みを帯びた驚異的なアウトラインと彼史上最高の仕上がりは、ステージで圧倒的な存在感を放っていました。結果は、見事優勝。それも日本選手権ファイナリストを破って満票1位での完勝でした。覚醒したバルクモンスターの勢いは止まりません。続く日本選手権では初ファイナリスト入りにしていきなりの5位、激戦のジュラシックカップでも6位となり、苦悩の2年間を乗り越えて大躍進を果たしたのです。
どのようにして伸び悩んだ期間を乗り越えたのか。それは「心の健康」を優先した体づくりでした。「勝ちたい」というマインドで望んでいた以前までは、そのプレッシャーから不調を招いていたため、昨年は競技以外のことにも目を向けたそうです。また、睡眠時間を7~8時間確保できるようになったことも、メンタルの安定やトレーニングの質の向上につながったようです。
今回は寺山諒選手についてお話しさせていただきました。メンタル面での課題を克服したことで、一皮剥けたバルクモンスターがこれからどれほどの快進撃を見せてくれるのか注目ですね。
次回は、寺山選手を倒した超バランス型ボディビルダーについてお話しします。お楽しみに!
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