世界最強の64歳! ボディビルのために片目の視力を失うことを選んだ狂気の男~合戸孝二【筋肉マニアのビルダー解体筋書】




YouTubeに投稿しているボディビル解説動画が話題の筋肉マニアが、毎週一人のボディビルダーをピックアップして紹介していく連載「解体筋書」。今回は、日本選手権4度の優勝を誇る“生きる伝説”合戸孝二選手です。

【フォト】「狂気の男」と言わしめる合戸選手の最強ボディ

64歳にして未だ現役最強の厚み

合戸選手は現在64歳で、一昨年(62歳)まで日本選手権ファイナリストの常連だった“生きる伝説”と言っても過言ではない偉大なボディビルダーです。20代後半で大会デビュー、37歳で日本選手権初出場と遅咲きながら、若手にも劣らない成長度は今でも健在です。2005年には44歳にして念願の初優勝を果たし、2007~2009年には3連覇、計4度の日本王者に輝いています。

合戸選手は、稀に見る超ハードトレーニングを行うことで知られており、60代半ばとなった現在でも1日40~50ものセット数をこなしているそうです。全盛期には、ダブルスプリット(1日2回トレーニングすること)でこの倍の量のトレーニングに励んでいたらしく、その拷問にも等しいハードさから、合戸選手はいつしか「狂気の男」と呼ばれるようになりました。

また、この異名には彼のもう一つの逸話が関係しています。それは、「ボディビルの為に片目の視力を失うことを選んだ」という話です。合戸選手は1999年に、過酷な減量による眼の栄養失調を引き起こし、それに伴う眼底出血が起こったことで左目の視力が著しく低下しました。当時、ステロイド治療を行えば僅かながら視力を取り戻すことができると言われましたが、競技が続けられなくなると知った合戸選手は治療を拒否し、左目の視力を犠牲にすることを決意したのです。その後、合戸選手が日本選手権初優勝を果たした2005年にこのエピソードが大きく取り上げられ、彼の狂気とも言えるボディビルに対する熱意が広く知れ渡ることになりました。

そんな数々の逸話を持つ現役のレジェンドは、肉体も異次元です。上半身の化け物じみた密度感とインナーマッスルの厚み、球体のように丸みを帯びた筋肉が生み出す脅威の迫力は、歴代最高クラスと言えます。中でも、大胸筋と僧帽筋は体から分離して見えるほどのサイズを誇っており、他の選手に絶望感を与えることも多いのではないかと思います。また、その強靭な肉体から放たれるモストマスキュラーは世界一で、現在でも彼のマスキュラーポーズの右に出る者は数少ないでしょう。

しかしながら、迫力に全振りしたような合戸選手のボディは、ウエストの太さや下半身とのバランスといった観点に着目したときに、弱点が浮き彫りになる要素にもなっており、プロポーション&バランス派の選手が多く存在する近年では、少し不利な状況と言えるかもしれません。また、加齢に伴う皮膚感の衰えもあって昨年は、長きに渡り君臨していた日本選手権ファイナリストから外れてしまいました。ただ、64歳という前代未聞の年齢を考えれば、むしろ今まで日本のTOP12に入っていたことに畏敬の念すら感じます。

今回は、合戸孝二選手についてお話しさせていただきました。最近は、世界マスターズも視野に入れていると噂の合戸選手。日本が誇る最強の64歳が世界の大舞台で輝く姿も期待したいですね。

次回は、「Mr.パーフェクト」の異名で知られる伝説のチャンピオンについてお話しします。お楽しみに!

▶次ページ:合戸選手のステージフォト&ムービー

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