YouTubeに投稿しているボディビル解説動画が話題の筋肉マニアが、毎週一人のボディビルダーをピックアップして紹介していく連載「解体筋書」。今回は、日本選手権4連覇の実績を持つ田代誠選手です。
【フォト&ムービー】「Mr.パーフェクト」と呼ばれた男のボディ
金剛力士像のような迫力と美しさ
田代選手は、1998年に日本選手権初出場にして3位入賞という快挙を達成して以降、トップ戦線で戦い続けている現役のレジェンドビルダーです。2001~2004年には、前回紹介した合戸孝二選手や谷野義弘選手といったライバル達を抑えて4連覇を成し遂げました。
上腕からウエストにかけての美しいアウトライン、驚異的な内転筋が生み出す重量感たっぷりの下半身、丸みを残しつつも筋繊維の一本一本まで確認できそうなほどの絞り、左右に張り出したふくらはぎに至るまでの発達は、思わずため息をついてしまうほどの荘厳さをしています。そのあまりの弱点のなさから彼は、「Mr.パーフェクト」と呼ばれるようになりました。
全身惚れ惚れするような完成度を誇る田代選手ですが、特に背中と腹斜筋は国宝級です。余すことなくセパレートした僧帽筋に、鉄パイプのような脊柱起立筋が内側から押し出すことによって現れる背中の表情は、まさに鬼神。凹凸感で言えば、日本最強の背中と言われる須江正尋選手をも上回っていると思います。加えて、腹直筋が横腹にも付いているような存在感を放つ腹斜筋は、鋭利なカットが無数に走っており、人体模型でも見られないような筋肉の鮮明さをしています。
田代選手は、偉大なチャンピオンでありながら、挑戦者として幾度となく日本選手権を盛り上げたファイターでもあります。1度目は、鈴木雅選手が不動の王者としての地位を確立しつつあった2012年。2005年以降、ステージから姿を消していた田代選手は、7年ぶりの復活で過去最高の仕上がりを披露し、鈴木選手との大接戦を繰り広げたのです。チャンピオン同士の戦いに、観客は大いに盛り上がりました。
2度目は、2024年の日本選手権。近年でも稀に見る予測不能の大混戦が行われる中、1次ピックアップに登場した田代選手は、昨年までの不調を吹き飛ばすような質感を見せてくれたのです。2022年にファイナリストを外れてからは、復活の兆しが中々見られなかった田代選手が、突如として調子を上げたことで、会場は驚きと興奮の嵐に見舞われました。
54歳となった今もなお、話題に事欠かない田代誠選手。昨年同様、激戦が予想される今年の日本選手権でどのような姿を見せてくれるのか、非常に楽しみですね。
次回は、2010年代に活躍した須江正尋に次ぐ背中の持ち主についてお話しします。お楽しみに!
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