競技パフォーマンスの向上に有益なストレッチは、精神面への効果も期待できるという。今回はその効果について、心理士資格を保有するトレーナーとして多くのクライアントを指導。名門・青山学院大学陸上競技部(長距離ブロック男子)のサポートにも携わるなど、15 年の指導キャリアを持つ関守トレーナーに話を聞いた。

【動画】ふくらはぎのストレッチ 血行改善で冷え性、むくみの対策にも
短時間で行なえて道具も必要としないストレッチは、日常に取り入れやすいボディケアです。
ストレッチには動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)と静的ストレッチ(スタティックストレッチ)の2種類があり、動的ストレッチは競技パフォーマンスの向上に効果が高く、筋や関節の状態を良好にするだけでなく、動作習得を向上させるといった作用が見込めます。
一方で静的ストレッチは柔軟性の改善や痛み・違和感の緩和に効果が期待できます。筋肉の痛みやストレスにつながる違和感・不快感を解消するには、静的ストレッチが最も効果が高いのではと考えています。
体の不調を解消することは、精神面を整えることにもつながります。心理学には「ストレッサー」という用語があり、ストレスには何かしらの要因があると考えます。精神面、環境面、物理面などさまざまな要因が挙げられる中、ストレッチはとくに「精神的ストレッサー」「肉体的ストレッサー」の除去に効果を発揮します。数分間でメンタルとフィジカルに好影響を与えることができるのは大きなメリットでしょう。
筋肉が緊張した状態が慢性化すると、血行不良から不快感が生じ、ストレス反応が起こりやすくなります。そのストレスによりさらに体が硬直し、肩コリや腰痛につながるなど負のスパイラルを招くことがあります。動的ストレッチ、静的ストレッチともに、定期的に行なうことで緊張の緩和や高いリラクゼーション効果が望めますので、ストレス解消法として非常に有効だと思います。
人間が感じる疲労感には、肉体的疲労と精神的疲労の2パターンが考えられます。肉体的疲労へのアプローチは静的ストレッチが有効ですが、精神的に疲労している場合は動的ストレッチで血流増加を促すこともリフレッシュにつながります。もちろん精神的な疲労を感じている際も、静的ストレッチで心身をリラックスさせることは効果的です。
体を酷使して疲れているのか、もしくはデスクワークなどあまり動かない状態が続いて疲労感を覚えているのかなど、自身の状態を客観的に把握することで有効なアプローチも見えてきます。
また、ストレッチには自律神経を整える効果もあります。静的ストレッチで副交感神経を優位にできるのはもちろん、たとえば朝にラジオ体操のような軽い動的ストレッチをして交感神経を優位にさせることで、1日をエネルギッシュにスタートさせるのも良いでしょう。このように静的・動的ストレッチを適切に使い分けることで自律神経の状態をある程度コントロールすることができます。
リラクゼーション目的で日常にストレッチを取り入れる際は、お風呂上がりなど体が温まった状態での実施を推奨します。筋膜の抵抗性が少し緩んでいる状態で静的ストレッチを行なうと痛みを感じにくいですし、効果も高いです。部位としては、臀部、腰部、太もも前・裏、ふくらはぎなど下半身にアプローチすることをおすすめします。ふくらはぎには筋ポンプ作用があるため、ストレッチすると血流を上げる効果も期待できます。下半身のケアを通して、リラクゼーション効果やスッキリ感が獲得できるでしょう。