フィギュアスケーターの体幹と足腰の強さ
7月1日(火)、フィギュアスケートの新シーズンが開幕した。今シーズンは、2026ミラノ・コルティナ冬季五輪のシーズンとなり、選手たちは約半年後の大舞台へ向け、さまざまなアイスショーや大会で演技を磨いていくことになる。
さて、フィギュアスケーターの練習というと思い浮かぶのは何だろうか。多くの人がイメージするのは氷上での滑る、跳ぶ、回るといった練習で、それ以外にどのようなことをしているのか、あまり知られていない感がある。
厳しいトレーニングと縁遠いスポーツとも捉えられている部分もある。ときに優雅さを思わせる「表現」を含む競技であることが、そんな印象をもたらすのだろう。だがフィギュアスケートの選手たちは、陸上でも身体の鍛錬を重ねて、氷上に立っている。
フィギュアスケートの技に、ジャンプやスピンなどがある。これらにおいて重要なのは、回転の中心となる体の軸がしっかりしていること。たとえばジャンプで踏み切ったとき、多少斜めに跳び上がってしまっても着氷のとき転倒せず踏ん張れる理由の1つは軸が曲がったりせずにいられるかどうかにある。軸は、氷上を滑る“スケーティング”そのものにもかかわっている。軸の重要性がそこからも分かる。
体の軸を保つために必要なのは体幹だ。だから体幹を鍛えるためのトレーニングには年間を通して取り組んでいる。
加えて、足腰の強さも欠かせない。大腿部やハムストリングスなど、必要だと考える部位の強化を筋力トレーニングで図っている。
フィギュアスケートでは、大きく体を反らすなど柔軟性も問われる。だから柔軟運動にも熱心に取り組むが、筋力をつけすぎると柔軟性が損なわれることもある。そのバランスをいかに図るかも重要で、そのため専属のトレーナーなどに指導を受ける選手も珍しくない。
華麗な演技を支える地道なトレーニング
滑り終えたあとの選手は精魂尽きはてたように、氷の上に手をついてひざまずくことがある。演技時間はフリーでは4分だが、その中には息継ぐ間もないくらい、さまざまな動作が詰め込まれているから、消耗し切るためだ。
体力をつけるため、とくにシーズン開幕を前の時期には走りこんで基礎体力づくりに励む。たとえば、北京五輪で銅メダルを獲得、2022年から世界選手権3連覇をはたした坂本花織の場合、毎年夏場に行なう合宿期間中、氷上での練習に加え、宿泊先からリンクまで毎日約3キロを走り、土台を築いている。
その坂本はオフシーズンのトレーニングの一端について、昨春こう語っている。
「(筋トレを)1日に1時間半くらいやります。何かを持ってというわけではなく、ほぼ自重でやる筋トレなんですけど、それでも筋肉がつくところはつきます。最近はどういう動かし方をしたらどこの筋肉が鍛えられるのかを感じながらやるようにしています」
坂本をはじめ、選手たちは地道に陸上でのトレーニングも重ねて大会に臨んでいる。それが華麗な演技を支えている。