7月21日、東京・大田区総合体育館で開催された東京女子プロレス・真夏のビッグマッチ『SUMMER SUN PRINCESS’25』。そのメインイベントで行なわれたのが王者・瑞希に荒井優希がチャレンジするプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合だった。
この春までSKE48のメンバーとしてアイドルとプロレスの“二刀流”で活躍してきた荒井優希がプロレス一本に活動を絞り、最高峰王座に挑むことで大きな注目を集めた一戦だったが、結果から言えば、荒井は瑞希の牙城を崩せなかった。

先日の記事で触れたように、瑞希は小柄ながら試行錯誤を繰り返し、トップへの階段を登った唯一無二のレスラーだ。体格をカバーするため肉体改造に励む道を捨て、むしろ小さな体を活かす必殺技を編み出したことでチャンピオンへの道を切り拓いた。
体格的には勝っている荒井はどんどん攻めていくが、それを瑞希がうまくいなしていく。荒井が得意とするFinally(かかと落とし)やサソリ固め、フルネルソンバスターをかけさせない瑞希。こうなると荒井は意地になって、なんとしても技を極めにかかるのだが、結果、冷静さを欠くだけでなく、必要以上にスタミナを消耗。攻めまくっているように見えて、じつは追いこまれていったのは荒井のほうだった。

一方の瑞希は前半、あまり技を使わずに応戦。そんな中、突然、秘技『渦飴』(回転しながらのボディーアタック)を繰り出したのだが、いきなり出したことと、いつもよりも明らかに回転が激しく、顔面まで巻きこんでいくような会心の一撃に荒井はもちろん、観客もびっくり! これで試合の流れはイッキに瑞希ペースに。最後は必殺のキューティースペシャルで3カウントを奪ってみせた。

小さい体のチャンピオンだが、それゆえに体力を上手に温存しての試合運びが光った。まさに柔よく剛を制す。無理に体を大きくするのではなく、小さな体を活かした技や闘い方をする、というスタイルを選択した瑞希は、その唯一無二のスタイルで長期政権を築こうとしている。

7月27日からは夏の最強女王決定トーナメント『東京プリンセスカップ』が開幕する。優勝者は瑞希への挑戦権をゲットできるのだが、じつは瑞希もトーナメントへの参戦が決まっている。もし瑞希が優勝した場合、逆に次の挑戦者を逆指名できることになる。「私が優勝して、この夏はプリンセス・オブ・プリンセスがトッププリンセスになります。姫ですね」(瑞希)
瑞希はプロレスを個人競技ではなく、団体競技だと考えている。第1試合からたくさんの選手がつないできたバトンを最後に受け取るのが、メインイベンターであり、チャンピオンとして防衛するだけでなく、お客さんに満足して帰っていただくことが真の勝者の仕事である、と。そういう意味ではこの日のタイトルマッチは満点に近い内容だったのではないか? 酷暑の中で開催されるトーナメントでの瑞希の闘いっぷりにも注目したい。
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