節目の年を迎えたからこそ、もう一度ステージに立つ決意をした。8月23日に行なわれたBEST BODY JAPAN東京大会。ベストボディ・ジャパン部門クイーンクラス(50歳〜59歳)では、かつて日本大会グランプリに輝いた稗田奈央子が再び表舞台に戻ってきた。
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「一度グランプリをいただいたので、区切りをつけて引退。その後はベストボディ・ジャパン公認講師や大会の審査員として活動してきました。でも今年50歳を迎えてクラスが変わる。怖さもあったけれど、この年齢だからこそ挑戦したいと思ったんです」
2020年にウーマンズクラスで日本大会グランプリを獲得して以来、5年ぶりのステージ。「久しぶりに味わえた幸せな時間でした」と語るその表情は、再び選手として第一線の舞台に立つ熱い覚悟に満ちていた。
「公認講師として教える立場だったので、体型を崩すわけにはいかなかった。キープはしていましたが、いざ大会に出るとなると、もう一段仕上げないといけないことを痛感しました」
さらに50代ならではの体づくりの難しさも身に染みたという。
「物理的に体をつくるのは本当に大変でした。40代と50代ではまったく違う。落ちにくかったり、たるみが出たり……。その中で一生懸命メンテナンスをして、少しでも美しく見えるよう工夫しました。40代と50代では美しさの出し方も違うんだなと実感しましたね」
だからこそ大会当日は特別な思いを込めてステージに立った。
「今日は失敗を恐れずに、強い気持ちで行こうと思ったんです。おきに行くステージは嫌だった。正直、すべてが思うようにはいきませんでした。でもステージを楽しむという一番大切なことはできたと思っています」
今大会の優勝はリスタートの出発点に過ぎない。視線はすでに先を見据えている。
「もう一度、日本一を狙います。日本大会に向けて、さらに磨きをかけていきたい。今の自分だから出せる空気をステージで表現したい」
いくつになっても健康美を体現できる。その姿勢は、年齢に縛られることなく自分らしい輝きを追い求めるすべての人に、力強いメッセージを投げかける。再びの日本一へ、東京大会を制し稗田の挑戦は静かに、しかし確実に幕を開けた。
取材・文・写真/石川哲也