笑顔で楽しそうにステージに立ち続ける選手ほど、その裏には苦しみを多く抱えているのかもしれない。それは、“マッスルエンターテイナー”として人気を集める、日本随一の筋肉を持つこの男にも言えることだろう。
【フォト&ムービー】60秒間に10以上のポーズ!会場を沸かせたNumber_i「INZM」フリーポーズ
9月7日に行なわれたボディビルの階級別日本一決戦『第29回日本クラス別ボディビル選手権大会』(千葉市民会館)の55kg以下級で優勝したのは広島県在住の赤澤範昭、52歳。これで大会9連覇の偉業達成である。
「連覇にはあんまりこだわっていないけど、55kg以下級という階級がある限りは出続けるだけ」と話し、勝利の喜びよりは、年に一度の大きなイベントを終えた安堵にひたっているようにも見える。
ただしその一方で、「9連覇もしとったら、毎年、楽勝でしょって言われることもあるんです。圧倒的と言われるのは嬉しいんだけど、でも僕の中ではこの階級に出場するだけで必死だし、年齢も年齢なんでめちゃくちゃシンドい。そこは知ってほしいかな。もちろんみんなシンドいんですけど」とも漏らす。
55kg以下級というのは最軽量クラスであり、155cmという小柄な赤澤であっても、その小さなボディにパンパンに筋肉を詰め込んだ上でギリギリまで体重を落とすのは容易ではない。普段は60kg前後で推移しながら、今年も大会前1週間でなんとかリミットまで減量し、検量を突破したとのことであった。
「来年は、もうちょっと体重管理をしとかな…ですけどね」
とはいえ、ステージ上ではそんな苦しさはいっさい見せないのも赤澤らしい。毎年恒例とも言える、エンタメ要素を詰め込んだフリーポーズにおいて、今年はNumber_iの「INZM」(イナズマ)をチョイス。キレキレのダンスのように見せながらも、60秒間の中で10を超える筋肉に力を込めたポーズを決めており、しっかりと「ボディビルのフリーポーズ」として成立させてみせた。
毎度のことながらこのフリーポーズは娘のなの春(なのは)さんのアドバイスがあってのものであり、「1週間前になーちゃんに見せたら、踊りすぎだとダメ出しされた」と、2人の合作であることを教えてくれた。
ちなみに、例年は年齢別の日本マスターズ選手権との2大会に出場してきたが、今年はそれを回避している。
「今年は1週間前に新潟だったから。(中学3年生の)なーちゃんは受験生なので、この時期にあんまりあちこち行かれんなと。本当は今日も千葉までは来ない予定だったけど、やっぱり急遽応援に行きたいと言ってくれて。だから今年はこの日本クラス別一本に絞りました」
そんな事情もあり、おそらく次戦はまた1年後となる。
「もし何かの世界大会の派遣選手に選ばれたら考えるけど、また来年かな。今日はけっこうこの階級に若い子が何人か出てたけど、まだまだ負けんようにしたいです」