早大の復活を託された美しき筋肉の塊 「早稲田っぽい身体」と称される男の洗練されたポージングにも注目




例えば大学サッカーであれば、1年間の中で重要度の大小はあれど複数のトーナメント戦が行なわれ、それと並行して年間を通したリーグ戦も開催される。語弊のある言い方かもしれないが、ある試合でうまくいかなくても、それを挽回できるチャンスはいくつか残されている。

【フォト&ムービー】白熱の部分賞審査で圧巻の“胸”を見せつけた小原

だが、こと学生ボディビルにおいてはその原理は通用しない。
関東の学生No.1を決める「関東学生ボディビル選手権大会」は年に1日だけ。「この日」への調整を外してしまうと、リベンジのチャンスは1年後にしかやってこない。学生生活においてはチャンスは4度のみ。だからこそ、ここに懸ける選手たちの思いの強さは計り知れず、それを応援する仲間たちの声にはとんでもない熱量が備わる。「学ボはアツい」と言われる所以である。

1年前、早稲田大学の小原啓太(こはら・けいた)が大会後に見せたどんよりとした表情は、強く印象に残っている。初出場となった2年生時の2023年大会では、関東で5位、全日本で4位。同部OBであり監督の和田駿氏も「早稲田っぽい身体をしているんです。ステージングも、早稲田の名だたる学生チャンプを彷彿とさせるものでした」と当時評しており、近年上位入賞が減ってきた名門・早稲田にとって、彼が復活の炎となることが期待される大会であった。

だが、昨年は関東で8位と順位を落とす結果に。特長であるポージングの美しさを存分に発揮して「ベストポーザー賞」を獲得はしたものの、全体的な仕上がりは甘く、それを本人も自覚していたのか、ステージ上の表情も前年に比べるとやや覇気が失われている印象があった。

そうして迎えた2025年、結果として順位は3位。「本音を言うともちろん優勝したかったんですけど」とは言いいながらも、部分賞の胸部門も獲得するなど、表情は晴れ晴れと、充実しているように感じられた。

「比較審査での呼ばれ方からも上位になれるかなとは感じつつでした。自分の中では今できるベストを出せたのかなと思っています。仕上がりの面で課題があるなと思ってこの1年間かけて取り組み、特に最終調整や減量期間の過ごし方を考え直して挑んだ大会だったので、頑張ってきたところが評価されたのは嬉しいです」

例年、関東大会から全日本大会までの空きは1週間であることが多いが、今年は2週間の時間がある。劇的な変化を望むことは難しいが、若いが故にコンディション調整に苦慮する選手もおり、ポジティブな変化で順位を高める選手もいるのが学生ボディビル。優勝した林航大(日本体育大4年)、準優勝の山田雄里杏(東海大4年)との差は、逆転できないものではないだろう。何より、2年前に関東から全日本にかけて順位を高めた実績が小原にはある。

「全日本にかけてまだまだできることあるかなと思っています。支えてくださっている方にアドバイスをいただきながらこの2週間、準備をしていきます」

早稲田復活の望みは、この男の筋肉にかかっている。

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