最高峰のベルトを正月早々、失ってしまい、一度は失意のどん底に叩きおとされてしまった失意の前王者・渡辺未詩。メインイベントから一転し、次の大会では第1試合で若手とのシングルマッチが組まれた。自分でテーマを見つけていなくてはならないとはいえ、すぐには見つからないであろう状況の激変ぶりだった。

「最初は悩んだし、落ち込みました。そのあと1月25日だったかな? ベルトを落としてから2週間後に新宿FACEで試合があって。3WAYマッチ(3人が同時にリング上で闘い、最初にフォールやギブアップを奪った選手の勝ち)でいちばんおいしくない勝ちにも負けにも絡まないって結果に終わったんですけど、その試合でこれから自分がどうして行くべきかが見つかったんです」
その日の対戦相手は同じアップアップガールズ(プロレス)に所属するらく、そして9月27日をもって卒業することが決まった猫はるなの2人。いわゆる「楽しいプロレス」の達人たちだ。この試合でもらくがなぜか道路によく置かれている三角コーンをリングに持ち込むという超カオスな展開となった。
「戸惑う反面、すごく楽しかったんですよ、その試合が。よくよく考えたら、いままでの私は『絶対にチャンピオンベルトを巻くんだ!』ってこだわるばかりに、どんどん視野を狭めて試合をしてきたような気がするんですよ。それをこの試合でらくにプロレスの広さを教えてもらったというか、よしっ、これから夏まではおもいっきり視野を広くしてプロレスを楽しもう!って。
夏になったら『東京プリンセスカップ』があるじゃないですか? そこで優勝すればタイトルへの挑戦権は手に入るわけだから、それまではプロレスを楽しむことに専念して、トーナメントがはじまったら、また勝ちにこだわる試合をしようって決めたんです。後楽園ホールの記者席から試合を見ていたのは、この大会の直後ですよね? あれもプロレスをおもいっきり楽しむ一環だったんです。さすがにトーナメントの1回戦の相手をくじ引きで決めたときに、らくちゃんの名前が出てきたときは『勝ちにこだわる試合ができるのかな?』って不安になったんですけど(苦笑)、その試合を乗り越えられたことは私の中で大きかった。やっぱり、こういうターニングポイントで関わってくるのが同期なんだなぁ〜って」
視野を広げてプロレスを楽しんだ半年間。たしかに渡辺未詩のプロレスはちょっと奥が深くなった印象がある。しかし、心機一転で迎えた真夏のトーナメントで思わぬ悲劇が渡辺未詩を襲うこととなる(明日公開の#3に続く)。