ボディビル競技者本人にとっても、観る者にとっても楽しみと言えるのが決勝進出者が披露するフリーポーズ(通常は1分、学生大会は90秒)だろう。近年は学生大会でもそのレベルは非常に高まり、息をのむほどの美しさを見せる選手も現れる。その一方で、“学生らしさ”を全面に出し、人の記憶に刻み込まれる表現を見せる選手もいる。
【フォト&ムービー】「勇気100%」をBGMにポーズを決める竹内
9月14日行なわれた「関東学生ボディビル選手権大会」では、20人の決勝進出者各々が独自のフリーポーズを披露。中でもこの日、もっとも観客を大きく盛り上げた一人が日本体育大学4年の竹内航一朗だろう。BGMに選んだのは、アニメ『忍たま乱太郎』シリーズの主題歌として誰もが知る「勇気100%」(なにわ男子バージョン)。
曲に合わせてポーズをとりはじめると会場からは自然と手拍子が巻き起こり、竹内自身の表情も明るくなっていく。終盤には、部のOBであり昨年度王者の大島達也の代名詞であった(?)たハートのポーズも組み込み、サビのラストでマスキュラーポーズを決めると、大歓声とともに本人も感極まって涙。「やり切った、全力で出し切った」美しさがそこにはあった。
ただ盛り上がる曲を使えばいいというわけではない。曲に込められたメッセージを理解し、“音ハメ”も抜群でポージングも高精度。声援に対して手で顔を覆って答えながら退場していく姿は、優勝者決定シーンと並んで、この日のハイライトであったと感じる。
大会後にSNSを更新した竹内は、「岡田先生の『人の心を動かせるビルダーになれ』という言葉を胸に、日々挑んできました。先生は『やり切った人は全員勝者』『結果というコントロールできない部分に惑わされるな』『見る人の胸を打つことが大切だ』と教えてくださいました。結果はもちろん大事ですが、それに振り回されず、自分がやり切れたかどうかに価値を置く――その教えがあったからこそ、ここまで全力で走り切ることができました」と、部の顧問であるバズーカ岡田氏の言葉がこの日のパフォーマンスの源であったと綴っている。
また、「1年生の頃から筋肉がなくても、暇さえあればポージング練習。その積み重ねが、ようやく形になりました。僕らしさ全開で、学生大会の楽しさを表現できたと思います。学生大会ならではの盛り上がりを作れたことも、本当に嬉しいです。手拍子や掛け声で一緒に会場を盛り上げていただき、ありがとうございました!会場がひとつになったあの瞬間は、間違いなく人生最高の時間でした」とも伝えている。
大会の結果としては20位。ギリギリの決勝進出ではあったが、竹内航一朗が多くの人の心を動かしたのは間違いない。