「鍛えているからだ!」…DDTがプロレス業界の中で大躍進した原動力となったのは、“DDTのエース”ことHARASHIMAが説得力のあるプロレスを続けてきたからだ。その精悍な顔つきは、デビューから20年以上たった今も変わらず、その年齢(51歳)を知れば驚く人がほとんどだろう。そのHARASHIMAに、強靭な肉体を作り続ける秘訣を聴くインタビュー全3回の第2回は、トレーニングを本格的にスタートし「鍛えている」が具現化するお話を。

【写真】年齢を感じさせない51歳・HARASHIMAの試合フォト
体を大きくするために必要な食事の半分くらいしか食べていなかった
HARASHIMAがプロレスラーとしてデビューする前、体力には自信はあったが如何せん細かった。
「結局、自重のトレーニングでしたからね。トレーニングジムが身近にない時代なので、市の体育館で練習していました。船木(誠勝)さんの『ハイブリッド肉体改造法』は読みましたよ。ウエイトの知識はすごくわかりやすいんですけど、食事に関しては今読むと突っ込みどころ満載ですけどね(笑)」
プロレスラーとしてデビューした後、トレーニングジムに通い始めたHARASHIMA。そのジムは、ボディビルのレジェンド・郷直樹が立ち上げたBODYZONEだった。
「郷さんはミスター東京、ミスター神奈川になった方で、そのジムで器具の扱い方やトレーニング方法を細かく教えてもらえたので今でも役立っていますね。ジムは丁寧に扱う、器具も丁寧に扱う…当たり前なんですけど、そういう大切なことを最初にしっかり教えてもらいました。最初にジムに行ったときに、まだ細かったので『この体でプロレスやっているの?』とびっくりされましたね…。最初のころはほぼ毎日行って、ヘトヘトになるまで部位ごとに鍛えて体を大きくしていきました」
食事も少しずつ変化していった。
「ようやく気づくんですよ、少量しか食べていなかったことに。それこそ、体を大きくするために必要な食事の半分くらいだったんです。実家だったので3食ちゃんと食べているんですよ。でも、変に真面目なのか間食をほぼしなかったんです。高校時代は、いつも学校の帰りにすごくおなかがすいているのに、夕食まで我慢していましたから(笑)。帰り道に売っているおにぎりを見て『今食べたら美味しいんだろうな』と思っていました(笑)。今はタンパク質がどれくらい入っているか、栄養バランスを全体的に見て食事を採るようにしています。好き嫌いは全然ないですね」
『鍛えているから大丈夫だよ』が学生プロレス時代からの口癖だった

2009年8月、DDTが初めて両国国技館に進出。HARASHIMAはDDTの最高王座であるKO-D無差別級王者であり、“エース”として活躍していた。
「体を大きくしようと思って、意図的に体重を増やした時期ですね。半年で8kgくらい増やしました。空腹前に食べる…3~4時間に1回食事をするという生活でした。シスコーンに豆乳を入れたものだと、お腹が空いてなくても食べられるので。もちろんトレーニングもしっかりしていましたよ」
トレーニングをしっかりしている…つまり「鍛えていた」HARASHIMAが「鍛えているからだ!」を決め台詞にしたのはいつからだったのだろうか。
「リングで言ったのは初めて(KO-D無差別級の)ベルトを巻いたぐらい…大鷲透さんに勝った2006年末だと思います。その大会の前にパワーボムで失神させられたことがあって、『鍛えているから大丈夫だよ』みたいなことを言っていたんですよ。でも思い起こせば、学生プロレスをやっているときにも、親や友達に『プロレスやっていて平気なの?』と聞かれたときに『鍛えているから大丈夫だよ』と口癖のように言っていました。やっぱり、心配かけたくないですからね。学生プロレス時代の仲間が、『プロになっても言ってんじゃん!』って笑っていました(笑)」
HARASHIMAがトップに立ち、団体としてどんどん大きくなっていったDDT。「鍛えているからだ!」という言葉の意味は、体だけのことではなかった。
「それでも僕はまだまだ細かったなと思いますよ、大きい体・いい体の人はいくらでもいますし。だから、何か言われたときは『心を鍛えている』って言っていましたね。プロレスラーなので、鍛えるのが当たり前じゃないですか。それをわざわざ言うのも変な話かなと感じて、遠慮していたこともありましたよ。でも、フレーズとして広まっていって、プラスの言葉ではあるので良かったのかなと思います」(#3に続く)