「鍛えているからだ!」…DDTがプロレス業界の中で大躍進した原動力となったのは、“DDTのエース”ことHARASHIMAが説得力のあるプロレスを続けてきたからだ。その精悍な顔つきは、デビューから20年以上たった今も変わらず、その年齢(51歳)を知れば驚く人がほとんどだろう。そのHARASHIMAに、強靭な肉体を作り続ける秘訣を聴くインタビュー全3回最終回は、年齢を重ねてからの体つくりのお話を。
【写真】DDTのエースを務める51歳・HARASHIMAの試合フォト
重い重量を上げるよりも、見栄えのある体にできるようなトレーニングを意識している
HARASHIMAはKO-D無差別級王座に10度戴冠し、通算防衛回数は27回。これらは同王座の最多記録だ。そんなHARASHIMAは、今年7月に51歳になったが“年齢不詳”といわれるほどの肉体・肌艶を誇っている。
「若さの秘訣ですか?わからないです(笑)。でも、好きなことを楽しんでやっているからじゃないですかね。プロレスが大好きですし、応援してもらえるのもうれしいですし、好きなことでご飯を食べられていますから。あ。そういえば15年くらい続けているのは、朝起きたら白湯を飲むことです(笑)。スーパーモデルがやっているというのを聞いてやってみたら、いい感じだったので続けていますね。あと、吸収が早いホエイプロテインは飲んでいます。プロテインは髪の毛や爪を作る作用もあるので、プラスに働いているかもしれないですね」
DDTというと、遠藤哲哉(現在はプロレスリング・ノアに参戦中)、飯野雄貴、KANONなどトレーニングを教えることもできる選手が揃っていることでも知られている。
「選手同士で情報交換はしていますよ。聞けばみんな教えてくれますし。どんな食事、どんな食べ方、いろいろ聞きますね。遠藤は食事を細かく管理しているので、北海道巡業に東京で作った冷凍した弁当を持ってきていますからね。せっかくの北海道、おいしいものがたくさんあるのに(笑)。でも遠藤の場合は、(そのストイックさが)体にしっかり現われていますよね」
HARASHIMAは、年齢に合わせてトレーニングの質を変えているという。
「昔はとにかく重い重量を上げようと。今は、見栄えのある体にできるようなトレーニングを意識していますね。たとえば、肩にはフロントとサイトとリアという3つの部位に分かれた三角筋があるんですが、アウトラインをしっかり見せるためには、側面をしっかり鍛えるサイドレイズが重要みたいな感じです。肩は丸く筋肉がつくとカッコいいので、どこをどうカッコよく見せたいかのか、シルエットを考えて効率よく鍛えるようにしていますね。やっぱり、年齢によって重いものを持ち上げられなくなるのはあると思いますよ。なので、僕はスクワット、ベンチプレス、デッドリフトの“ビッグ3”をやらないんです。トレーニングを始めるときは、この3つをベースにするのが基本なんですけど、プロレスの試合で使う動きに合わせてジャンピングスクワットに変えています。もちろんビッグ3をやると基礎が強くなるんですけど、僕はきつくないトレーニングで体つくりをするようになりました。きつくないから続けられますし、ルーティーンになってしまえば気合いを入れなくても体を維持できるので」
KO-D無差別級を獲ってやろうという気持ちがなくなったときは辞めるとき

そのHARASHIMAの驚異の瞬発力が発揮された試合があった。今年5月の後楽園ホール大会、HARASHIMAは当時のKO-D無差別級王者クリス・ブルックスとシングルで対戦し、わずか22秒で勝利した。しかも、伝家の宝刀・蒼魔刀(そうまとう)で抜群に説得力のある勝ち方で。
「あれはただ、僕が冷静でいられたことが勝因ですね。(クリスが)奇襲してきたんですけど、まったくもって冷静だったんで。あとは『鍛えているから』ですよ(笑)。でも、結構前から回復力が遅くなっていることはわかっているんです。連戦だと疲労がたまるのはわかっているので、この1試合に賭けるという試合ができれば。それがあの試合だったと思いますね」
しかし最近のHARASHIMAは、挑戦はしているがなかなかベルトに手が届かない。最後にベルトを巻いたのは、2022年3月、吉村直巳と組んでKO-Dタッグ王座を保持していたときにまで遡る。
「またベルトを巻きたいと思っていますし、昔からのファンの方もまた僕のベルト姿を見たいと言ってくれていますしね。最近は新しいファンも増えて、僕のベルト姿を見たことがないから見たいと言われることも増えました。(そういう言葉を聞くと)よりがんばろう、もっと応援されたいと思います。あとは単純に悔しいので、やり返したいという気持ちもあります。最近の王座戦は、勝てなかった以外は満足のいくパフォーマンスはできているので自信はありますよ。またKO-D無差別級を獲ってやろうという気持ちがなくなったら、そのときは辞めるときだと思っています。だからこそ、今のコンディションを維持して…いや、今よりも向上させてベストな体調でタイトルマッチをやりたいですね」
50を過ぎてなお血気盛んなHARASHIMA。年齢に合わせてトレーニングをしてベルトを狙う。なぜかって?それは…「鍛えているからだ!」